ギャッベの草木染めとは? 染料と五つの色、イランの染め工場で見たこと 質問にお答えします

染め上がった毛糸が、赤・からし色・灰青・こげ茶など、色ごとに床に積まれている
染め上がった毛糸の山(イラン・シーラーズ郊外の染め工場・2010年7月)

ギャッベの毛糸は、山に自生する植物などで染めています。

茜の根、ざくろの皮、くるみの実の皮、そしてザグロスの山の野の草。
色は、赤・緑・黄・茶・青の五つが基本です。

善光寺の表参道で家具店をしている、松葉屋家具店の九代目、滝澤善五郎です。
2007年の秋から、春と秋にギャッベ展を開いてきました。
ギャッベの冊子の終わりに、よく聞かれることとその答えを載せています。
そのひとつ「染料はどんなものですか?」に、もう少しくわしくお答えします。

昔は遊牧民のテントで、いまは染め工場で

冊子には、こう書いています。
「毛糸は山で自生する植物などから、いろいろな色に染められます」

昔は、それぞれの遊牧民のテントで染めていました。
ギャッベを求める人が増えて、いまは染め工場でまとめて染めています。
家々から集められた毛糸は、工場で選り分けられ、等級ごとに保管されます。
そして四十八時間、大釜で染める。

2010年7月3日、シーラーズの郊外の染め工場で

屋根の高い建物に並ぶ丸い染め釜。湯気が上がり、外側まで赤く染みている
湯気の上がる染め釜

2010年の夏、イランへギャッベを選びに行きました。
7月3日、シーラーズの郊外の染め工場へ。

屋根の高い、長い建物に、丸い大きな釜がずらりと並んで、湯気が上がっていました。
釜の外側まで、赤く染みている。
白い毛糸の束を、赤い染め液の中へ、職人さんが長い棒で沈めていきます。

赤い染め液の釜に、白い毛糸の束を長い棒で沈めているところ
白い毛糸を、赤い染め液に沈める

僕も、やらせてもらいました。
棒の先に毛糸を引っかけて、釜から持ち上げる。
すごく重い。

染め釜から、赤く染まった毛糸を長い棒で持ち上げる滝澤善五郎
釜から毛糸を持ち上げてみた(すごく重い)

むっとする、染料のにおいと、熱さ。

僕たちがギャッベの教科書にしている『草木染め絨毯ギャッベ』(向村春樹・片岡弘子、新宿書房)には、染めの大釜は直径二メートル、一度に染める羊毛は平均して百キロ、とあります。
重いはずです。

根も、実の皮も、葉も、花も、茎も ―― 染料の見本の部屋

染料の見本の入れ物。札にPrangos(ペルシャ語でジャシールのわら)とあり、干し草のような刻んだ茎が入っている
見本の部屋の「ジャシールのわら」

工場には、染料の見本を並べた部屋もありました。
ふた付きの白い入れ物に、英語とペルシャ語の札。

茜の根、ざくろの皮、くるみの皮、ターメリック、ユーカリの葉、カモミール、ウォード(藍の仲間)。
白い結晶は、ミョウバンの仲間。草木染めで、色を毛糸に留めるのに使われるものです。
それから、干し草のような、刻んだ茎の入った入れ物。札には「ジャシールのわら」と書いてありました。

草木染めといっても、草だけではありません。
根も、実の皮も、葉も、花も、茎も使います。

(茜の根と、この見本の部屋のことは、7月に茜色のこと ――夏に、赤を選ぶという話にも書きました)

ギャッベの五つの色と、その染料

教科書によると、ギャッベの基本の色は、赤・緑・黄・茶・青の五つです。

赤は、茜の根から。
冊子には「茜といろんな染料をミックスして2度染めしたもの」とあります。
茜のことは、11月20日からの「茜いろのギャッベ展」にあわせて、あらためて書きます。

茶は、くるみの実の、緑色の皮から。
干して、粉にして使います。

黄は、ざくろの実の皮と、ジャシールという野生の草から。
冊子では、カレーの香辛料で知られるターメリックも挙げています。

青は、インディゴ。
教科書には「インディゴ染料だけはドイツから輸入したもの」とあります。
深い紺は、染めを繰り返して出します。

そして緑は、黄色とインディゴを重ねる、二度染めです。

(「すべて天然染料です」とは言い切れないことも含めて、染料のことで正直に書いておきたいことは、茜色のことの終わりに書きました)

緑の下の黄色は、ザグロスの山の草

ジャシールは、ザグロス山地の標高二千三百メートル前後の、南向きの岩場に自生する草です。
秋に刈り取って干し、二センチほどに切って、染料にする。
ハーブのフェンネルに形が似ていて、春にやさしい黄色の花をつけるそうです。

染め工場の見本の部屋で見た、干し草のような茎が、これでした。

ギャッベの羊も、ザグロスの山の、標高二千五百メートルから三千メートルほどのところで育ちます。
羊が草を食べて育つ山に、毛糸を染める草も生えている。

羊は、草の色を食べている。
……と書いたら、ちょっと言いすぎでしょうか。

インディゴの毛糸は、釜の中では緑色

紙の帯に、青・緑・黄・橙・赤の毛糸の房を何十色も結んだ色見本
毛糸の色見本

青の染め方は、教科書にこうあります。

インディゴを溶かした五十度から六十度のお湯に、毛糸を四十五分から九十分ひたす。
大釜は、煮立てない。
釜をのぞくと、毛糸は緑色に染まっている。
引き上げて空気に触れさせると、青に変わっていく。
濃い青にするときは、これを何度も繰り返すそうです。

店に並んでいるギャッベの青も、いちどは緑色だったのかもしれません。

札の名前は「すいかの2」

濃い青緑の毛糸の山に、ペルシャ語で「すいかの2」と書いた札が付いている
札は「すいかの2」

染め上がった毛糸は、色ごとに山にして、手書きの札が付いていました。
ペルシャ語で「オリーブの2」「香辛料の30」「すいかの2」「緑の3」。

「すいかの2」の山は、濃い青緑でした。
すいかの皮の色、なのでしょうか。

染めない色もある ―― 羊の色、そのまま

ギャッベの羊は、白い羊だけではありません。
茶色、灰色、黒に近いこげ茶もいます。
染めずに、羊の毛の色をそのまま使った、無染色のギャッベもあります(羊の色、そのままのギャッベ)。

教科書にも「原毛のままのナチュラルな茶色は、独特の風合いがあり、これもいいもの」とあります。
茜や茶や青を濃く染めるときには、濃い色の原毛を使うのだそうです。

2024年の6月には、染めていない原毛のギャッベを集めて「羊の色、そのままのギャッベ」という展示をしました。
そのときの案内には、こう書いています。
「原毛ギャッベを杉の床いっぱいにならべると、アイボリーの糸が光をあつめて、ボワっと明るくなったよう」

草木で染めた色は、落ちる?

教科書には、染め上がった毛糸を、標高二千メートルの土地の強い日ざしで乾かす、とあります。
それでも、日の当たる場所で何年も使えば、色は少しずつ変わっていきます。
そのことはギャッベは日焼けする?に書きました。

店で、色を見てください

ギャッベの色は、写真ではなかなか伝わりません。
朝の光と、夕方の灯りの下でも、ちがって見えます。

秋のギャッベ展は、11月3日(火・祝)まで。最終日は16時までです。
長野市大門町45、善光寺の表参道。定休日は火曜と水曜です。

この問いは、秋冬のギャッベの冊子のQ&Aから選びました。
冊子をお送りします(先着百冊)。お問い合わせフォームに「冊子希望」と書いて、お送りください。

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