こんにちは。100年家具店店主、松葉屋善五郎です。
連載でお送りしている「一生使える学習机」十二の想い。
今回は折り返しの第六章です。
読み切るには、なかなか骨の折れる文量ではありますが、いつか自分でも振り返るものとして、ここに書き記しておきたいと思うのです。
ところで、以前にもお知らせしたことがあったかもしれませんが、「『一生使える学習机』十二の想い」は、冊子として製本したことがあります。文庫として手に取るにはちょうどいい大きさ、程よい読み応えのあるものになり、とても嬉しかったことを覚えています。
帯には、こんな言葉を書き残しました。
「どうしてこの冊子を書いたのか」 この冊子は、学習机についての私の想いを書きました。それは自分自身の子育てをあらためて確認したい気持ちだったのかもしれません。 子どもは体いっぱいで感じ、笑い、泣き、怒ります。繊細で感受性ゆたかな子どものにこそ「本物」に触れてさせるべきではないか。今は、そう信じています。
それでは、第六章をお届けします。
第六章 学習机の寿命
一、お母さん全員が知っている事実
はじめに(「一生使える学習机」十二の想い 0/12)の中でもお話ししましたが、先輩お母さんたちの声を聞いてわかったことは、
家庭の中で使わなくなってしまった家具No.1が、学習机である、ということでした。
実際に僕の家庭でも、実家の建て替えの時に、姉が使っていた机が捨てられてしまい、悲しい思いをしたものです。
ほとんどの方がそのような体験をされているのではないでしょうか。
小学校入学を前にしたご家族に学習机をお届けすると、お子さんは飛び上がらんばかりに歓喜の声を上げて喜んでくれます。
なのに十年も経つと、途端にじゃまになってしまう。この落差はあまりに残念ですね。
二、学習机の一生
小学校入学(6歳)で購入され、高校卒業(18歳)まで使えば、十二年。これが普通のケース。
しかし、そんなに長く、大事に使われている学習机を見たことがありますか?
ある先輩お母さんの話では、高校生の男の子は自分の机があまりに子どもっぽいのが嫌で、無印の机に買い替えたそう。それだとわずか九年。
一方であるお客様は、おじいちゃんの使われていた木製の机を少し手直しされて、娘さんが使い続けています。それだと七十年以上。
一口に学習机の一生といっても、これだけの差があるのです。
その差はどこから来るのでしょう。
三、家具の廃棄の方法
学習机をゴミとして処分するのも決して楽ではありません。
先日、学習机の処分を依頼されたケース(長野市のゴミ分別による)で説明しましょう。
こんな机でした。
・木質素材の本体と棚
・引き出しが大小5杯
・蛍光灯ランプが取付けられてある。(※第十一章で説明します)
→解体の手順です。
①まず、不燃部分(金属やライト)を取り外します。ライトは簡単に取り外せましたが、②が厄介です。
②埋め込まれた、引き出しのプラスチックのツマミ。これが取り外すのに、相当の苦労が必要でした。
③引き出しのスライドレール。これも取り外しにかなりの困難を極めました。
④次に可燃部分(本体)を廃棄できる大きさに裁断します。しかし、木ネジやタッカー(大型のホチキスみたいなもの)が隠れているので、裁断する工具を傷つけないように注意しなくてはいけません。
⑤適当な大きさごと束ねて終了。長野市では粗大ゴミシール(100円)を貼って出します。
さて、たった数年の学習机のために、これだけの廃棄物を出すのは、いかがなものでしょうか。
これらの作業をあなたご自身がやることを想像してみてください。
もちろん焼却や埋め立てによって生まれる環境負荷も決して小さくないと考えます。
また処分以前に、子ども部屋から出せなかったり、2階から下ろすことができないなど、笑えないご相談も少なからずいただいています。
ものを選ぶなら、どんなことを大切にするべきか。
なるべくきちんと考えておきたいものです。