里山の炭焼き

木炭は、木材を蒸し焼きにし炭化させて作る炭のことをいいます。

日本列島においては新石器時代の頃から木炭が用いられていたと推定されています。平安時代には山林部を中心に炭焼きが広く行われ、年貢としても徴収されたといい、炭が人々の暮らしの重要な存在だったことが伺い知れます。日本の木炭生産量は1950年に年間約200万トンを記録していましたが、その後はガスや電気の普及とともに1957年をピークに急速に落ち込み、1970年には約28万トン、1980年には約7万トンと急激に減少、現在はピーク時の1/100 ほどといわれています。

林をぬけるともくもく!立ち上がる湯気に遭遇

ある初冬の大雪になった翌日、私たちは小谷村大網にいるくらしてさんを訪ね、里山暮らしの重要な仕事のひとつである、炭焼きを見せていただきました。
炭のことあれこれを聞いているうちに、山のサイクルと人々の暮らしの歯車がぴたりと組まれて、里山がうまくまわっていることがみえてきました。

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炭と日本人のくらし

前田さん 大網地域で男の仕事といえば、昔は炭焼きを生業にしていた人がほとんどだと聞いています。その時代は里でなく、山のナラ林の中に炭窯を作って、木を伐って、焼いて炭にして里におろす。そこの木を切り尽くすと別の林で新しい窯を作って焼く。そうやって移動しながら炭焼きをしていくと、15~20年で元の場所に戻る。すると以前切った木が炭焼きにいい頃合いの大きさに成長しているという。そうやって山の中で循環しながらやってきたそうです。

北村さん これは戦後ぐらいの話かな。薪炭林(しんたんりん)という木を燃料として使っていた時代はそうやってね。

木炭生産量の変遷

前田さん 時代が変わって暖房の燃料が灯油やガスに変わっていくうちに炭を使わなくなって。この地域では自家用レベルで今も炭焼きしている人はいるんです。80歳(取材時)のおじいちゃんは今でも炭ごたつを使っているので、秋になると小さな窯で炭を焼いてこたつで使っています。あとは 薪を使っていたんだと思うんですよね。

善五郎 生活で火を使うというと、飯炊きとか暖房、風呂焚きと……

北村さん あとは火鉢ですね。農家の家は結構広くて囲炉裏があった。そこに薪をドンとくべてね。それでも寒かったら、厚着していましたよね。

ここから炭焼きの話

善五郎 炭焼きの工程をお聞きします。窯に木を入れたのは12月8日でしたっけ? 今回乾燥はしていない?

北村さん 10月頃に切ったものはだいぶ湿気っていたので3日くらい前に割いて使いました。太くて手で割るのが大変なものは薪割り機で、あとは手で割っています。

小屋の横に高く積みあげられた薪

善五郎 薪ストーブに入れるくらいの太さですか?

北村さん そうですね。ほかにも枝とか細いものはそのまま入れます。窯の熱は上がっていくので、まずは敷き木を入れて、その上に立てて並べていきます。上のアーチの部分は細かいものを入れて隙間がないようにします。

善五郎 炭には黒炭と白炭があるんですよね。

北村さん それは炭化の終わらせ方のちがいです。黒炭は土窯が多くて炭化を終えたら窯を密閉させて、火が消えて冷めるのを待ちます。白炭は石窯で1000度くらいにあげて、窯の口を開けて炭を掻き出して灰をかけるから白っぽくなるんですね。金属のようにカチカチの硬いものになります。白炭は火力が強くて火の持ちも良くて、焼き鳥とかにいいですね。あとは茶道で使われることも。

善五郎 暖をとるのはどちらですか?

北村さん 用途によって使い分けるのですが、黒炭の方が匂いを吸いやすいから脱臭にもいいですね。

善五郎 焚き付けの時は薪ストーブと同じで小枝などに火をつけるんですか?

北村さん そうですね。今はガスバーナーでやるんですけど、今回はちゃんと神事で、という流れで火起こしをして、火種できたんだけど着火できなくて、最終的にはマッチになっちゃったんですけどね(笑)

取材中に描いた速攻メモ。これでまちがってないですか?

善五郎 窯の形はこうですか? *上記の図を参照

北村さん 上から見ると卵型というか……

善五郎 炭焼き小屋から水蒸気が出ていた箇所はどこですか?

北村さん 後ろの穴のところです。

善五郎 すごい勢いですね。ここへ来る時、ひと目で場所がわかりましたよ。

蒸気で煙る小屋の中。射し込む光に皆、神聖な気持ちになる

昨日からはじまった炭焼き

北村さん 窯の入口側から燃えていくので前の方から灰になるんですけど、今回はなるたけ硬い炭にしようと窯の口を閉めてみたんです。だからだいぶ燃えていましたね。

善五郎 それは昨日火を入れて、夜通し火を焚いたあとの今朝の状態ですね。

「炭焼きは神聖なもの」だと情熱をこめて語る炭師の原伸介さん。炭焼きを丁寧に明るく、楽しく教えてくださいました

北村さん 最終的には100度近くから90度近くなって、窯の口を小さくして酸素を遮断して直炭化(じかたんか)していくんですね。

善五郎 直炭化というのは火を消してもある程度炭化が進んでいく状態ですね。精錬が終わったら、窯の口を閉めるんでしたっけ?

北村さん 閉めるときはゆっくりゆっくりやって、最終的には全部閉めます。

薪を詰めたら、矢羽状にレンガを積んでベトで埋める。最終的には窯の口を塞いで、酸素を遮断していく

善五郎 そこから3~4日かけて炭化して、冷やしていく。

北村さん それから中の状態を見ながらゆっくり出していきます。

善五郎 これは“窯出し”という言葉でいいんですか?

北村さん 出炭(しゅったん)といいますね。本来は冷めきらないうちに出して、冷めきらないうちに次の炭焼きをするんです。

善五郎 余熱を利用するんですね。

北村さん 2回目から炭が良くなっていくと言いますね。今回は炭師の原伸介さんに炭焼きの指導をしてもらいました。温度と、煙と、匂いと、温度計は煙の出口にあって煙と温度だけで中の状態を確認しながらやっていくんですね。

善五郎 伸介さんは「いい窯だ」と窯を褒めるんだとおっしゃっていましたね。

高温の炎の灯り

前田さん 先生から「5ミリ閉じてください」っていう連絡が来て、指示どおりにするとパッと温度が変わるんですね。火加減の調整というよりは煙の出入口の穴の大きさの調整をして空気の量を加減するんです。後半はちょっとずつゆっくりと穴を閉じながら調整していくんですね。

北村さん 何よりも急な変化は窯に良くないので、窯が気持ちのいいようにやっていくのがいいんですね。今回は1カ月程して出炭されました。

 

※本記事は「松葉屋通信43号」に掲載したものを再編集してご紹介しています

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