こんにちは、松葉屋家具店・店主の滝澤善五郎です。
松葉屋がご縁のあったお客さまにお届けしている「松葉屋通信」では
これまでにたくさんの方にお話しをお聞きしてきました。
岐阜県の銘木市に伺ったときのこと。
目に飛び込んできた巨木たちは“圧倒的”というだけでは
言い表せない巨大さと量。
すべて持って帰りたいという衝動を抑えるのが大変なくらい、
テンションが上がります。
市場の方たちに
1本の大木が一枚板になるまでの流れをお聞きしました。
あらためて一枚板の魅力と価値を再確認できたインタビューを、
どうぞお読みください。
日本は森の国。
深い山を背景に、いにしえより森の民は木を切り、暮らしの道具を作り、
そして森を育ててきました。
時代は流れても、暮らしのかたちが変わっても、
「木の底力」を知っている人がいる、
「そんな場所」を訪ねました。
こんなに豊富に銘木が集められている、日本でも指折りの場所。
日本の銘木市場の現状
善五郎 一般的に天然木から想像すると、家を建てる時に使う柱などの建築材をイメ―ジしますが、「銘木」の定義について教えてください。
伊藤 「銘木」は主に、稀少価値や鑑賞価値がある木材の総称です。
上杉 樹齢が古い大径木をさす場合もあります。建築部材では和室の構造材ではなく、みせる部分に使われるほ うが多いです。
善五郎 なるほど。岐阜の銘木市は他の市場と比ベて大径の一枚板が充実しているので、 いつも買い付けさせていただいているんです。
他の市場は衰退していると聞きますが、岐阜という土地になにか繁栄の秘密があるんですか?
上杉 全国銘木連合会の下で 残っている市場は秋田、東京、岐阜、大阪、京都、奈良です。
東京と大阪を除いて、杉の産地の市場は残っています。
伊藤 かつては四国、茨城、九州、愛知にも市場がありましたが、時代の変化についてこれませんでした。岐阜が今も残ってこれたのは、大径木の無垢材を取り扱っていたことが大きいですね。
善五郎 他の市場はどういう状況なのでしょうか。
上杉 一枚板はあまり扱っていないですね。特に一枚板の大径木の広葉樹の扱いは限られてしまいます。
まず、岐阜は広葉樹の産地です。岐阜は日本の真ん中という立地の良さもあり、大阪や東京といった消費地に近い利便性も相まって集中します。
善五郎 全国から集まる大径木は、どのように見つけてくるのでしょうか。
伊藤 丸太を切り出している業者が地主さんから買うこともあれば、道路整備の一環で伐採する場合もあります。また、欲しい木を業者に直接伝えて切る場合も。
上杉 丸太は切って使える材になるまで5年以上はかかるんです。良いと思った丸太でも割ってみたら大穴があいていたりするので、ここで見ていただいている材は本当に希少ですね。
高価な一枚板ですので、これからは産地をお知らせできるようトレーサビリティを意識していきたいと考えています。
一枚板の天板になるまで
善五郎 山から切り出して製品になるまでの流れを教えてください。
上杉 通常は現場である程度の大きさに切り、出しやすい場所であれば長いまま市場へ運びます。山奥にある木は切っても自力で下ろすことが難しいので、へリコ フターで運ぶこともあります。
それを製材業者が買い、製材。そのまま小売に行く場合とさらに市場へ売り出す場合に分かれます。
伊藤 そこから5年以上は天然乾燥させ、製品として加工していくんです。
善五郎 私どもは製材ののち天然乾燥したものを買い付けさせていただいてます。とても時間のかかるものなんですね。
銘木市場を預かる私たちの役目
善五郎 稀少な大径木、生きている木を切り続けているので、年々出荷数は減っているのでしょうか。
伊藤 たしかに材の枯渴は顕著に感じています。材が減ってきている中で市場も減っていく。
でも需要が減ったことで、バラ ンス的にはちょうど良くなっているんです。
善五郎 森を守る観点で、材木業者としてどのように考えていますか?
上杉 切り出す代わりに、山に櫸と栃を植える活動もしています。
私たちの役目は樹齢何百年という大径木の価値をしっかり伝え、大切に長く使っていただけるように啓蒙することだと思っています。
善五郎 私も今後、お客さまに銘木の価値をお伝えできるようがんばります。
本日はありがとうございました。
※掲載している情報は、松葉屋通信vol.27 2014年当時のものです