「ゾランヴァリ・ギャッベの買付け日記」イランから松葉屋に届くまで #03

「宝石の原石を掘り起こすように選んだギャッベ」

「松葉屋のギャッベって、ほかのとぜんぜん違う」。

そんな言葉をいただきます。その理由のひとつには、

『僕たちのギャッベの選び方』にあると自負しています。

松葉屋らしい絵画のような風景を感じさせる一枚。
絵本のような物語を感じさせる一枚。
僕たちは、イラン・ゾランヴァリ社の倉庫に眠る
2万枚以上の中から選ばれたギャッベを
「宝石の原石を掘り起こすように」 選びぬき、
名前をつけて紹介してきました。

そんな『僕たちのギャッベ選び』を下支えしてくれているのが、
選定人・波多野さんです。

なかなかイランへ行けない僕たちに代わって、ギャッベ選びをしてくれて、

「これは、松葉屋のあの方がとっても気に入りそうだなあ」なんて、

松葉屋のことを 理解してくれている波多野さんは、僕たちが信頼する選定人です。
ここでは、そんな波多野さんに、イランでギャッベを選ぶときのことなどをお訊きしたインタビューをご紹介していきます。


前回の「ゾランヴァリ・ギャッベの買付け日記」イランから松葉屋に届くまで#02もご覧ください。


 

ゾランヴァリ・ギャッベは、 草木染めと上質な羊毛が使われていること。 そして丁寧な仕事による糸の美しさ。

これは絵に例えると、 画材や絵の具が優れているということ。


 

善五郎:宝石の原石のように、同じものはふたつとないギャッベ。その美しさは、織り子さんたちのど んな感性によるのでしょうか?

波多野:織り子さんは、遊牧民としての生活を続けながら、家族で代々受け継がれていくものとして、ギャッベに誇りをもっていますから、 やはり、すべてのギャッベは、織り子さん一人ひとりの感性に寄るところがあります。

善五郎:中には、ゾランヴァリから、原案があった りもするんですか?

波多野:原案とは意味が違いますが、あるといえば あります。
織り子さん任せだけになっていれば、今でもオールドギャッベやシラーズ絨毯のような、ひし形やジグザグの幾何学模様ばかりになっていると思います。ゾランヴァリ社が、デザインを教えたり、伝えたりすることで、絵柄の美しさや織り子さんたちの感性をより高めているのは事実です

ただし、ゾランヴァリ社は、「どんなデザインも、織り子さんたちの感性があるから、ほかならない」 と公言し、昔ながらの織り子さんの感性とセンスをリスペクトしています。やはり、細かな色のちがいや、彩りのうつろいは、まったく同じデザイン画をもとにしたとしても、最終的には織り子さんたちが寸分違わずに織るわけではないですし、そのちがいこそ、 織り子さんたちの息吹を感じる部分として、尊重していますから。

善五郎:家具も同じように、木目や木の色合いがまったく同じということはないですからね。

波多野:そうですよね。真似てみたのか、同じような絵柄をもつギャッベが出てくることもありますが、それぞれのもつ良さは、やはりすべてがひとつの作品であり、同じではないですねゾランヴァリ・ギャッベは、草木染めと上質な羊毛を使い、丁寧な仕事 による糸の美しさを選び、品質を保もちながら、織り子さんたちの暮らしも伝統も守っています。これは絵に例えると、画材や絵の具が優れているということであって、その色を使って織り子さんたちがどのように表現するか、その作品性と織り子さんたちの手仕事に、すべてを委ね、豊かな感性を生み出す下支えをしているわけです

善五郎:ギャッベを選定する上 で、重要視しているポイントはありますか?

波多野:ゾランヴァリ・ギャッベは、毛ざわりなども見て、 必要があれば修理を依頼することもできます。仕上がりはもちろん、いいものを選ぶようにしていますが、最近は織り子さんの個性をより感じるようになりました。とても丁寧な人、一見すると雑なようだけど、大事なところは抑えている人、ノリや感覚でやっているのかな、センスがいいなあと感じさせる人など、さまざまです。それもギャッベを見る愉しさですね ( 笑 )

ゾランヴァリ社の工員はみな、16時に仕事を切り上げ、そのあとはサッカーをしたりしますね。ホワイト企業です ( 笑 )。これはシラーズにある染色工房も同じようです。企業としては、カイガラムシ ( コチニール ) に代表される新色や、エコテックス(繊維の安全証明)を取得するなど、天然素材で染色することにこだわっています。
一方で昨今では、工場で作られるギャッベも多い中、今もかつてと変わらず、織り子さんの感性を尊重し、自由さの余白を保ちながら、生活面までしっかりサポートしている。そこがゾランヴァリ社のすばらしさです。
まさに『FATHER OF GABBEH』という名にふさわしい存在ですね。
これからも、イランのことやギャッベのことなど、わからないことがあれば、何でも聞いてください。

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