僕がずっと思い描いてきた家具づくりのかたち-宣言みたいなもの

僕は、ある想いに立ち止まらざるを得なかった。
ずっと、嘘をついているような気持ちでいた。

例えば、僕たちの暮らしを振り返ると、
野菜は生産者の顔が見えて、
肉は個体番号から生育過程を追跡できるのがあたりまえじゃないか。

しかし、一方で……。
何万、何十万円という家具は
お客様の手に渡るまでの過程がほとんど見えない。

「これはおかしい」という、

疑問や後ろめたさが
僕の頭の中をぐるぐる回っていました。

ましてや、アフリカやアジアの木材は、
ほとんどが違法伐採であるとの指摘があることをを知り、
本当のところをきちんと知りたいという想いが、
どんどん僕の中で大きくなっていきました。

違法伐採とその対策
http://www.shinrin-ringyou.com/forest_world/ihou.php

うやむやにはできない想いに立ち止まり、
2016年12月16日午前、
僕は長野県信濃町の山中で家具の原木伐採に立ち会っていた。
(正確には、伐採ではなく、「伐倒 ばっとう」と言うそうです)

家具をつくるためには
どれだけの人の手がかかっているのか? を
知っておきたい。

すこし想像してみてほしい。
家具製作に至る材の調達まででさえ、途方もない時間と人が携わっている。

山を守る人
木を伐る人

林道を整備する人
丸太を運搬する人
運搬する車両を整備する人

丸太を製材する人
製材機の鋸の目立てをする人
それを積み上げる人

それを乾燥させる人
乾燥した材を選ぶ人
それを市場に出す人

市場の事務の人
市場で運搬・整頓する人
市場の自動販売機に飲み物を入れる人……。

 

 

 

「山と森、樹と人々の暮らしが一本の糸でつながる」。
永い永い時間をかけた、いつまでも続くひとつなぎのループ。

ただ、僕はそれを少しでも意識したかった。
少しでも知りたかった。
それを求めるお客様に伝えたかった。

そうやって、
松葉屋にできること、
僕にできることは、なんだろうかとずっと考えてきました。

そして、僕は思いました。

山、林業、森の保全から、
材料調達、家具製作、運送、
200年後のメンテナンス修理まで、
「ものの命の行く末」を、全部見通せるようにしたい。

さらには、世の中にある、
役目を終え、廃棄されてしまうような家具や道具(僕たちがつくったものでなくとも)を、
松葉屋が磨き、締め直し、手を加え、
一度は価値がなくなったと思われるようなものに、
もう一度、命と意味と価値の芽を吹き込みたい、と。
これから、まずは手の届く範囲で、
ずっと思い描いてきた家具づくりをかたちにする。

地元の広葉樹を伐倒することも、
一発勝負の製材も、永年の知恵を要する乾燥も、
数ヶ月から数年かかる家具づくりの過程を、きちんと見届けていく。

材木だけでなく、

椅子の張地には、
捕獲されては捨てられてしまっていた長野の鹿や猪の革を。
クッション材には、
信州新町のサフォークやコリデールの羊毛を。
仕上げ塗料には、
長野県鬼無里の荏胡麻油を精製して。

一貫して、身近な地元の素材を使った家具づくりをはじめる。

松葉屋にとって、小さくともたしかな一歩。
時間はかかろうとも、歩み出したいと思います。

松葉屋家具店+くらし道具研究所 滝澤善五郎

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