思い出の桜 いつまでもそばに

こんにちは。店主滝澤善五郎です。

今、松葉屋では、お客さまからご相談を頂き、ひとつの座卓をつくっています。
 
座卓になるのは、一本の桜の木。

この木は、お客さまの庭で、家族のように数十年、いっしょに過ごしてきました。お客様にとって、特別な思いのある木です。


「この桜は、私の娘が小学校へ入学する頃に植えてもらった記念樹です。実は、この度、どうしても切らなくてはいけなくなりました。なにかひとつのかたちにして、残しておけるでしょうか」
 
そんな言葉を頂き、伐採から、製材・乾燥、家具づくりまでをお手伝いさせていただくことになりました。
 

2月。清々しい青空のもと、伐採の日を迎えました。
一本のロープを命綱に、職人さんが上方から切っていきます。

伐採がはじまると、なんだか、この場所からお引越しすることが寂しく感じられてきましたが、みんなで最後まで伐採を見届けました。

かたちを変え、これからも家族のそばにあることを思いながら。

 そして、4月。伐採された木は製材の工程に入りました。
 
私と大工さんも一緒に、家具になる様子を思い浮かべながら、もっと言えば、家具が暮らしの中心にあることを思い浮かべながら、製材に立ち会ってきました。


まんべんなく、きちんと使える部分を残せるよう、職人さんたちは切り口を予測し、入念に刃の位置を決めていきました。それでも、枝分かれの部分や節には、傷んでいる箇所もあり、家具材として引き継いでいける部分は全体の半分ほど、というのが正直なところです。
 
 
もしかしたら、伐採せずに、残しておくことも
ひとつのかたちなのかもしれません。
 
しかし、時間の経過でこれからさらに朽ちていってしまうことを考えると、家族の暮らしに寄り添うかたちにすることで、できる限り永く、この木に対する思いも引き継いでいくことができれば。
 
かたちを変え、きちんと残していく。
そんな、ひとつの木の行く末を見届けました。
現在は、乾燥の工程に入っています。
乾燥はこれから約1年の時間をかけます。

乾燥から戻ってくるのは、今年の冬頃。そして、次の春には、工房に運ばれ、家具製作の工程に入ります。

また引き続き、経過をお知らせしていきますね。

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