
ギャッベは、洗えるのか。
洗えます。
ギャッベは、水と石鹸で洗える絨毯です。
イランでは、織り上がったギャッベを、水で洗ってから送り出しています。
では、家で丸洗いできるのか。
こちらは、一言で「できる」とも「できない」とも言えません。
家の洗濯機で脱水できるくらいの小さなものなら、家で洗っても大丈夫。
大きなものは、家の洗濯機や、お風呂場や、コインランドリーで、丸洗いしないでください。
いちばん難しいのは、乾かすことです。
善光寺の表参道で家具店をしている、松葉屋家具店の九代目、滝澤善五郎です。
2007年の秋から、春と秋にギャッベ展を開いてきました。
「ギャッベって、洗濯できますか」
店で、よく聞かれます。
イランの洗い場で見てきたことと、クリーニングを頼んでいる職人さんに聞いたことから、書いておきます。
ギャッベは、洗われてから日本に来る
2010年の7月、テヘランの倉庫で、ギャッベが仕上げられていくところを見せてもらいました。
遊牧民が織ったギャッベは、トラックで倉庫に運ばれてきます。
大きな回転ドラムに入れて、砂や土ぼこりを落とす。
裏をバーナーで焼いて、むだな毛を焼き切る。表の毛を刈りそろえる。
それから、洗い場へ。

長い長い、コンクリートの洗い場でした。
壁ぎわの太い蛇口から、水を流しっぱなしにして、長靴の男の人たちが、鍬のような道具で、ギャッベをしごくように洗っていく。
洗剤は、絨毯のための専用のもの。表と裏を、二回ずつ。
洗い終えたら、大きな脱水機で水を切ります。
水を含んだギャッベは非常に重く、この作業は4〜5人の男の人が総掛かりだそうです(向村春樹・片岡弘子『GABBEH 草木染め絨毯ギャッベ』新宿書房)。

そして、サッカー場ほどもある干し場に、何百枚も並べて、天日で干す。
砂利の広場一面が、色とりどりの絨毯で埋まっていました。
ギャッベは、こうやって一度洗われてから、日本に来ます。
小さなギャッベなら、家で洗っても大丈夫
家の洗濯機で脱水できるくらいの、小さなギャッベなら、家で洗っても大丈夫です。
最近は、お客様にもそうお伝えしています。
ただ、なかなか乾かない。
厚く織った羊の毛は、乾くまでに日にちがかかります。
日本の天気は、三日も四日も快晴が続くことが、あまりありません。
季節によっても、乾きやすいときと、そうでないときがある。
一言で「できる」「できない」と言えないのは、そこです。
大きなギャッベは、家で丸洗いしないで
松葉屋のメンテナンスブックに、こう書きました。
「ギャッベにとって一番のクリーニングは石鹸で水洗いですが、お家ではできない特別な技術があります」
イランでは、水を吸ったギャッベを、何人もがかりで脱水機にかけ、広い干し場で干していました。
クリーニングを頼んでいる職人さんのところでも、外には干さず、乾燥室で乾かしています。
大きなギャッベを、家で奥まで乾かしきるのは、難しい。
羊の毛は、濡れたままだと、もろくなります。
汚れも、表面だけ取れて奥に残っていると、数か月から数年かけて、シミになって浮き上がってくることがあります。
家で洗うときに、気をつけてほしいこと
お湯は、熱くしない。
職人さんは、熱いお湯を使いません。草木で染めた色がにじんだり流れたり、羊の毛が傷んだりするおそれがあるからです。使うのは、三十度から四十度のぬるま湯。
三十年、四十年前の古いギャッベは、ぬるま湯でも色が落ちることがあるので、水で。
重曹は、使わない。
重曹を使った方のギャッベは、色が抜けてしまっていた、と職人さん。ネットで調べて重曹を使う方は、とても多いそうです。
重曹は、油を溶かします。ギャッベの毛には、ラノリンという羊の油が、ほとんど抜かずに残してあります。
洗剤は、薄めて。
職人さんは、織りと、肌ざわりと、汚れを見て、洗剤を選んでいます。
こぼしたときに洗剤を使うなら、「薄めて目立たないところで試してから」と職人さんは言います。
「落とそうとして手を加えて、加えれば加えるほど取りにくくなっていることもあります」とも。
乾かすときは、扇風機やドライヤーの風を当てて、毛を手でほぐしながら。
裏も、めくって風を当ててください。
コインランドリーなら?
コインランドリーの大きな洗濯機と乾燥機も、おすすめしません。
職人さんは、五十度を超えるお湯を使いません。羊の毛が傷むおそれが、ぐんと上がるからです。
乾燥機は、熱い風を当てながら、回して乾かします。
職人さんが避けている熱を、わざわざかけることになります。
ふだんは、水拭きで足ります

ふだんの汚れは、掃除機と、固く絞った濡れタオルで足ります。
絨毯の汚れの七割は、髪の毛や食べかすのような、固いもの。これは掃除機で。
残りの三割は、手や足から出る皮脂や汗。これは掃除機では取れません。濡れタオルで、毛並みに沿って拭くと、ほとんど取れます。
洗剤は、いりません。
何かこぼしたら、まず乾いたタオルで拭き取る。
下にタオルを敷いて、水を含ませたタオルで拭き取る。これをくり返す。こすらない。
くわしくは、ギャッベは一年中使ってください ―― 手入れ・クリーニング・修理のこと に。
犬や猫のおしっこは、ギャッベに犬や猫がおしっこをしたら? に書いています。
水に浸かってしまったら
大雨や水害で、ギャッベが水に浸かってしまったら。
捨てないでください。
畳や床板は、濡れたら処分するしかありません。でも、ギャッベは、洗って乾かせば、また使えます。
ただ、濡れたままにしないこと。まずは、乾かすこと。
洗いたくなったら、職人さんへ

五年から十年使ったら、一度、洗ってみてください。全体がふんわりして、気持ちがいいですよ。
街のクリーニング屋さんには、出さないでください。
草木で染めた糸と、油を抜いていない羊の毛。これを洗ったことがあるかどうかで、結果が変わります。
松葉屋には、職人がついています。
松葉屋で買ったものでなくても、ご相談ください。
職人さんのところでの洗い方と、頼み方は、ギャッベは一年中使ってください に書きました。
店で、さわってみてください

店先に敷いてあるギャッベも、同じように洗われ、干されてから、日本に来たものです。
さわってみてください。
洗いと修理の相談も、お店で、お電話で、お問い合わせのフォームから。
長野市大門町45、善光寺の表参道。定休日は火曜と水曜です。

