長野県大町市を拠点に、山のお手入れ、間伐材生産を手がける
『山仕事創造舎』代表の香山由人さんのインタビュー後編です。
興味深いおはなし、引き続きお楽しみください。
※前編を読みたい方は こちら からどうぞ。
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森の中に街がある
香山 日本の森林は現在、戦争時に伐られなかった木が100歳になってきたという状態です。これから寿命を迎えて倒れる木も増えてきます。長く生かす木を残しながら、枯れる前に伐って利用し、その後に新しい木が育つ環境を整える必要があります。
善五郎 そんな中で僕たちの「街の中の森作り」の話を聞いて、香山さんはどう思いますか?
香山 もともと日本の庭って、そういうものだったのではないでしょうか? 「近自然学」という考え方がありますが、公共土木の河川工事などでも近自然工法と言ってひとつの標準にもなっています。コンクリートで塗り固めたり流路をまっすぐにするのではなく、自然に沿うことで結果的に低コストで長持ちして、人にも気持ちがいいという考えです。
善五郎 「近自然学」って幅広い理念ですね。
香山 これからの森と人の関わりで言えば、森林のエネルギーをどう活かすかが重要です。たとえば都市に森があれば、端材を燃やして街の熱量に変える取り組みがヨーロッパで始まっています。水道の配管のように熱配管のインフラを都市部に整備するので、木を燃やした熱をそのまま運ぶというわけです。さらには余った熱エネルギーを発電につなげようとしています。都市に森があることで、木のエネルギーを効率よく使うことができますよね。
善五郎 製品にするだけでなく、エネルギーに変えて届けるという考え方。これは面白いと思います。
香山 私もこれは続けられる仕組みだと思います。森林は夏に太陽からのエネルギーを蓄えて成長します。そうして成長した木を捨てずに活かすということは、つまり太陽からのエネルギーを活かすことになりますよね。
善五郎 まだまだ松葉屋の森は比べものにならないくらい小さな規模です。でも森があることで、身の回りの環境を見つめ直すきっかけになれたらいいと思います。まずは「街の中に森があったらきもちいいよね」くらいから始めます。
■PROFILE
香山 由人さん
神奈川県出身。海外NGO、国会議員秘書を経て、八坂村で山暮らしをはじめる。木こり歴24年、長野県指導林業士、信州フォレストコンダクター