
ギャッベは、なぜ値段が違うのか。
同じくらいの大きさでも、値段がずいぶん違う。
「ギャッベって、高いですね」
お店で、よく言われます。
値段の違いは、手間の違いです。
羊の毛。糸の紡ぎ方。草木の染め。織る月日。
どこに、どれだけ人の手がかかっているかで、値段が変わります。
善光寺の表参道で家具店をしている、松葉屋家具店の九代目、滝澤善五郎です。
2007年の秋から、春と秋にギャッベ展を開いてきました。
ギャッベを選んでいる人にも話を聞いて、書いておきます。
松葉屋のギャッベは、いくらくらい?
「相場は、いくらくらいですか」と聞かれることもあります。
大きさも、毛の質も、一枚ずつ違うので、一概には言えません。
松葉屋のギャッベの、だいたいの目安です。
ミニギャッベ(四十五センチ角ほど) 三万円から五万円ほど
玄関に敷く大きさ 十万円台の後半から三十万円ほど
いちばん大きい、二メートル×三メートルほど 百数十万円から、高いもので三百万円ほど
同じ大きさでも、値段が違う理由
一、羊の毛
ギャッベの羊は、イランのザグロスの山の、標高二千五百メートルから三千メートルほどのところで暮らしています。
寒さと暑さから体を守るために、毛はきめが細かく、長く、油をたっぷり含んでいる。
その油(ラノリン)を、ほとんど抜かずに使います。
ウールとひとことで言っても、質はさまざまです。
ギャッベを選ぶとき、まず見るのは、毛の質です。
二、糸

ギャッベの糸は、遊牧民が手で紡いだものです。
手で紡いだ糸は、太さがふぞろい。機械で紡いだ糸は、そろっている。
いまのペルシャ絨毯のほとんどは、機械で紡いだ糸で織られているそうです。だから、あれだけ細かく織れる。
機械で紡ぐときは、毛の油を抜くのが基本です。
油が抜けると、肌ざわりと艶が変わります。
三、草木の染め

草木の染料は、空気に触れさせることで色が変わります。藍や、茜の根がそうです。
だから、人が羊毛を持ち上げたり、混ぜたりする。その時間が長い。
化学の染料は、お湯に溶かして混ぜるだけで、むらなく染まります。
人の手がかかる時間の差が、値段の差になっていきます。
2010年の夏、シーラーズの近くの染め工場で、湯気の上がる大きな釜と、染料の見本の部屋を見せてもらいました。
茜の根、ざくろの皮、くるみの皮、ターメリック、ウォード(藍の仲間)、スマック。

松葉屋では、草木で染めたギャッベだけを選んでいます。
四、織る月日
遊牧民の織り子さんが、二人か三人で、幅百五十センチほどの一枚を、三か月から四か月かけて織ります。
色むらが、きれいか。織りが、細かいか。
上と下の房の近くまで、ていねいに、詰めて織ってあるか。
これは、裏を見ないと分かりません。
松葉屋のギャッベは、佳子と僕が、一枚一枚選んでいます(ギャッベの選び方 ―― 千枚とか見ても、何枚あるかなって)。
ここ数年の値上がりの理由
いちばん大きいのは、運ぶお金です。飛行機で運ぶ費用が、ずいぶん上がりました。
それから、人の手間賃と、染めの材料も上がっています。
上質な羊の毛が、ヨーロッパの服の世界からも注目されて、手に入れるのが難しくなってきた、とも聞きます。
本物の見分け方は?
「本物かどうか、どこで分かるの」と聞かれることもあります。
手で紡いで、手で織って、草木で染めたギャッベかどうか。いちばん分かりやすいのは、糸です。
手で紡いだ糸は、太さがふぞろい。そろいすぎていたら、機械で紡いだ糸かもしれません。
次に、艶と手ざわり。
羊の油を抜いていない毛は、しっとりしていて、艶があります。
それから、裏。
房の近くまで、詰めて、ていねいに織ってあるか。
色だけで見分けるのは、正直、難しいと思います。
高いペルシャ絨毯は、糸にする前に、櫛で、チクチクの原因になる短い毛や硬い毛をはじいて、細くて長い毛だけを引きそろえます。
機械で織った安いギャッベなどは、そこまではしません。そこまですれば、値段に乗せなければならないからです。
安いものは、染め、糸の作り方、櫛がけの手間が、そのぶん少ない。値段は、手間に比例しています。
「高いですね」と言われたら
「確かに、高いですよね」
お店では、まず、そう答えます。
「僕も、一生のうちに一枚か二枚。それくらいの、人生の出会いのようなものだから、そうそう決められるものじゃないですよね」
でも、手で作ったものは、お椀ひとつでも、家具でも、織物でも、ある程度は正直なものです。
手間がかかって、素材のいいものは、高い。
それが当たり前なんだ、ということを、知ってほしいんです。
いまは、一円でも安いものを、という時代です。
でも、ものの価値は、値段だけで決まるものでしょうか。
軽自動車でも、いまは二百万円ほどする時代です。
三十年、五十年と大切に使えば、百年でも使えるものを、安いから、値段だけで決めていいものか。
一生に一度の出会いを、もっと大切にしてほしい。
値段は、ものを買うときの大事なことです。だからお店では、通り一遍の説明ではなく、ほかのものと比べたり、手で作るものの、いちばん大事なところの話をしています。
松葉屋のギャッベの冊子にも、こう書きました。
「使い捨てで数年で買いかえることの手間と無駄、環境への負荷、日々の使い心地のストレス。そういったものの全くないギャッベの価値を知ると、納得いただけるお値段ではないでしょうか」
五年から十年に一度、職人さんのところで洗えば、毛がよみがえる(ギャッベは一年中使ってください ―― 手入れ・クリーニング・修理のこと)。
僕の家の二十年目のギャッベも、しなやかに育っています(ギャッベは日焼けする?)。
店で、裏も見てみてください
値段の理由のいくつかは、裏を見ると分かります。
店に来られたら、裏も見てみてください。
お支払いは、クレジットカードや分割払いもご利用いただけます。
長野市大門町45、善光寺の表参道。定休日は火曜と水曜です。

