一枚板の値段は、なぜ一枚ずつ違うのか

先日、店で「これ、おいくらですか」と聞かれました。

家具屋なので、毎日のように聞かれる言葉です。
それなのに、いつも少しだけ、間があいてしまう。

店内に並ぶ一枚板のテーブルと、立てかけられた板

同じ樹種、同じ長さ。それでも値段が違う

隣に並んでいる二枚の一枚板。
同じ樹種で、長さもほとんど同じ。
なのに、値段が違う。

お客様が「どうして」という顔をされる。当然だと思います。

一枚板の値段は、決まった相場があって、そこに当てはめているわけではありません。
一枚ずつ、違う理由で、違う値段になっています。

それを、ひとつずつ並べてみます。

1.樹種 ── 同じ「ケヤキ」でも、別の木

まず、樹種。

ただ、同じ「ケヤキ」でも、どこの山で、どんな風に当たって育ったかで、まったく別の木になります。

日当たりのいい斜面で伸びやかに育った木と、谷底で他の木に押されながら立っていた木とでは、木目の出方も、色も、硬さも違う。

「ケヤキだからいくら」という値段の付け方は、できません。
樹種は、値段の出発点にすぎない。

2.大きさ ── 長さより、幅

次に、大きさ。

ここでよく誤解されるのですが、効いてくるのは長さより、幅です。

長いだけの板なら、探せば出てきます。
でも、幅の広い板は、そもそも数がない。

一年で一センチ育つ木もあれば、十年かけて一センチの木もある。
土と、水と、日当たりと、まわりの木との競り合いで、まったく変わります。

だから一概には言えないのだけれど——

幅が十センチ広いというのは、やはり、それだけ長く立っていたということ。

十センチのために、何十年か、下手をすればもっと。
その年数は、あとから足すことができません。

3.厚み ── 重さは、そのまま手間

それから、厚み。

厚い板は、重い。
重い板は、運ぶのも、乾かすのにも、とにかく手間がかかります。

人数が要る。機械が要る。置く場所も要る。
そして厚い板ほど、乾くのに時間がかかり、そのあいだに動く幅も大きくなる。

厚みは、そのまま手間の量です。

4.乾燥 ── ここがいちばん、値段に効く

そして、乾燥。

ここがいちばん、値段に効きます。

挽いてから、使えるようになるまで、三年から五年。

そのあいだ、桟を挟んで、風を通して、ただ、待つ。
ひたすら、待つ。

桟を挟んで乾かしている一枚板

その時間に割れることもある。反ることもある。
待ったぶんが、全部むだになることもあります。

待てるかどうかが、値段になっている。

ここは、あまり言われないことだと思うので

三年から五年待つというのは、その板が三年から五年、売り物にならないまま、店の裏に寝ているということです。

仕入れたお金は、そのあいだずっと寝たまま。

だから、待たずに売れる板のほうが、商売としてはずっと楽です。
乾燥を早める方法もあります。

それでも待つのは、待った板のほうが、あとで動かないから。

買っていただいたテーブルが、五年後、十年後に割れたり反ったりしない。
そのための三年から五年です。

値段の中には、その年数が入っています。

5.仕上げ ── 耳、節、平面

あとは、

  • 耳の形
  • 節や割れを、どう納めたか
  • どう平面を出して、磨き上げたか
  • 仕上げに、どれだけ時間をかけたか

ここは板ごとに、まったく違う手がかかります。
節ひとつをどう扱うかで、半日が消えることもある。

ぜんぶ足して、一枚の値段。

だから、同じ値段の板が二枚とありません

同じ樹種で、同じ長さで、隣に並んでいても、

育った山が違い、幅が違い、厚みが違い、待った年数が違い、手のかけかたが違う。

だから、同じ値段の板が、二枚とありません。

「高いですね」と言われることがある

そうですね、と答えます。
安くはありません。

ただ、

木が育ってきた百数十年という年月。
その板が立っていた山と、伐った人と、挽いた人と、待った年数を、

全部つけて、お渡ししています。

(値段の話をすると、いつも長くなってしまう)

値段の理由は、板の前でしか、お話しできません

ここまで書いてきましたが、
文章で読むのと、板の前で聞くのとでは、まるで違います。

札に書いてある数字がどこから来たのかは、その板を前にして、耳を触りながらでないと、お話しできない。

見るだけ、触るだけで構いません。
どうぞ、寄っていってください。


※以下は、この記事を書いた時点(2026年9月)のお知らせです

日本の山で育った 広葉樹 一枚板のテーブル展

  • 会期 2026年8月29日(土)〜9月27日(日)
  • 時間 10:00 − 18:00
  • 会場 松葉屋家具店 + くらし道具学研究所
  • 併催 北信州で育った広葉樹「巾ハギテーブル」
日本の山で育った広葉樹 一枚板のテーブル展

9月21日(月・祝)は、軽井沢レイクニュータウン 発地の芝生広場で「Sound in the Circle」に出店します(11時から夕方まで)。
一枚板とギャッベを何枚か持っていきます。芝生の上にギャッベを敷くのは、はじめて。
※台風の状況によっては見合わせる場合があります。


松葉屋家具店 + くらし道具学研究所
〒380-0841 長野県長野市大門町45(善光寺表参道)
TEL 026-232-2346 / フリーダイヤル 0120-55-2346
営業 10:00〜18:00 / 定休 火曜・水曜

長野駅ロータリー 善光寺方面1番乗り場のバスで10分、「花の小路」で降りて、通りの反対側の目の前です。
お車の方は、駐車場をご案内しますのでお知らせください。

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