ギャッベには多彩な文様が織り込まれています。
遊牧民が身の回りに見る植物や動物、自然の風景を
モチーフにした文様が多く用いられており、吉祥な縁起を願う文様や、
家族や動物たちを厄災から守る魔除けの文様とか。
中でも、「生命の樹」と呼ばれる文様は、永遠の生命を司り、豊穣や子孫繁栄を
もたらしてくれるとされています。
南ペルシャの乾燥地帯に住む遊牧民は、緑豊かな樹木を生命の象徴として
尊崇し、信仰の対象としてきました。厳しい自然環境において、
大きく枝を伸ばす緑豊かな樹木には強い生命力があり、神が宿ると
信じられていたのも不思議ないですね。
由来を調べてみました。
「生命の樹」は、天と地を結び、神々の世界と繋がっているものとされ、
その姿は、ペルシャの高木「サエーナ」に由来しているとされています。
「サエーナ樹」は、古代から信仰されていたゾロアスター教に登場する
聖樹です。
ゾロアスター教では、最高神アフラ・マズダーによって世界が創造され、
天空、海、そして大地の3つの領域に分けられたとされています。
そして、海の中央に世界最初で、すべての植物の母とされる「サエーナ樹」が
そびえ立ちました。サエーナ樹には、あらゆる種類の薬草の種が
実っていたため、「あらゆる癒しの木」または「百種樹」とも呼ばれます。
この木には、霊鳥のサエーナ鳥(シームルグとも呼ばれる)が住んでおり、
樹の種を食べることで長寿を誇ります。
サエーナ鳥は、飛ぶたびに薬草の種が飛び散り、海は生命力にあふれ、
さまざまな種類の植物が生えました。
現代でもこの伝承がギャッベに織り込まれています。
□豊穰・子孫繁栄のシンボル とされる 石榴(ザクロ)の文様
インドが原産のザクロは、子孫繁栄、多産や豊穣のシンボル。
一つの実にたくさんの種を宿し、多産や豊穣、子孫繁栄を象徴するとされます。
また、安産や子どもの守り神である鬼子母神は、左手で子どもを抱き、
右手にザクロを持つ姿で表されます。
ザクロは昔から妊婦や産婦の神様とされ、子孫繁栄や安産の願いを込めて、
多くの人に親しまれてきました。
さらに、古代ペルシャの医学では、ザクロの実に含まれる成分が、
血液をサラサラにする効果があると考えられていたとか。
イスラームの聖典『クルアーン』によれば、ザクロは唯一神アッラーが
創造した5大果物の一つとされています。
ひとつのひとつの文様が、いろいろな意味を持ち、織り込まれていることを
皆さんにも知っていただきたいですね。