国内産広葉樹 一枚板テーブルとは何だろう

松葉屋家具店 店主の滝澤善五郎です。

一枚板テーブルとは――自然を暮らしに

「一枚板テーブル」とは、一本の原木から切り出した継ぎ目のない木材を、そのまま天板に用いたテーブルのこと。家具店などで目にする木製テーブルの多くは、複数の板を接着して作られた集成材が使われている。しかし、一枚板テーブルは“ただ一枚の板”だけを使うため、自然が育んだ木目の流れや節をそのまま生かしている。

この継ぎ目のない大きな板から生まれる唯一無二の木目。長い年月をかけて育った木の歴史が詰まっている。見る人に安心感やぬくもりを与える存在。

希少性の高さも大きな特徴だ。樹齢百年から200年におよぶ大木が必要で、一本の木から大量に取れるわけではない。実際に部屋に置くと、森の空気をそのまま持ち込んだかのような圧倒的な存在感を放つ。

国内産広葉樹の魅力――身近な森がもたらす豊かさ

広葉樹とは

広葉樹は、ドングリのような堅い実をつける落葉樹の総称だ。日本の森林はスギやヒノキなど針葉樹が中心だが、日本の森林面積に占める広葉樹の割合は、正確な数字を断言することは難しいが、おおよそ4割とされている 。  

日本の森林は、大きく針葉樹林と広葉樹林に分けられ、戦後、木材生産を目的としたスギやヒノキなどの針葉樹の人工林が積極的に造成されたため、一時期は針葉樹の割合が高くなっている。近年、輸入材の高騰、環境問題への意識の高まりや生物多様性の保全の観点から、広葉樹林の重要性が再認識されている。

国内産の広葉樹が一枚板として選ばれるのは、多彩な木目や色合いに大きな魅力があるからだ。

気候や環境の影響を受けながら育った国産の広葉樹は、寒暖差によって年輪が詰まり、味わい深い木目を形成する。以下では、代表的な樹種を4種紹介する。

楢(なら)

ブナ科コナラ属に分類される木で、日本国内の広範囲に自生している。力強い年輪が特徴で、床材や梁(はり)にも使われるほど耐久性が高い。家具材としては“オーク”という名称で知られる欧米産の木と近縁だが、国内の楢は淡くやわらかな色味を帯び、迫力と落ち着きを兼ね備える。

欅(けやき)

「日本を代表する広葉樹」として古くから高級材とされてきた木だ。波打つような“虎斑(とらふ)”や“縮み杢(ちぢみもく)”などの木目が表れやすく、赤褐色の色合いによって重厚感が生まれる。粘り強く硬い性質があり、耐久性や耐朽性にも優れている。寺社建築の床柱や梁としても使われてきた歴史があり、高級感を重視する場合は外せない存在。

栗(くり)

日本各地に分布するブナ科クリ属の木だ。腐食に強く、水にも強い性質を持ち、枕木や古民家の土台などにも用いられてきた。木目は大きめで力強い印象があり、時間が経つと少しずつ飴色に変化して深い味わいが増す。

胡桃(くるみ)

ウォールナットに近い性質を持つクルミ科の落葉広葉樹だ。硬さと柔軟性をほどよく兼ね備え、衝撃を吸収しやすい面もある。色合いは上品なブラウン系が多く、しっとりとした大人っぽい雰囲気。成長が遅く流通量が少ないため希少価値が高く、「特別な木を使っている」満足感を得やすい。

一枚板テーブルが生まれるまで――伐採から仕上げまで

1. 伐採・製材

最初に樹齢100年以上の大木を伐採し、製材所で厚みのある板へ挽き割る作業を行う。どのように挽き割るかを判断する「木取り」の工程では、木目や割れの入りやすい部分を考慮しながら、最終的な一枚板の姿をイメージする。ここでの職人的な目利きが仕上がりを大きく左右する。

製材直後の板は水分を多く含んでおり、そのままではテーブルに使えない。次の工程に進み、安定させる必要がある。

2. 乾燥工程(天然乾燥と人工乾燥)

厚みのある一枚板を使うには、しっかりと乾燥させる必要がある。まずは天然乾燥で数年かけて含水率を下げ、仕上げとして人工乾燥機や高周波を使って内部までムラなく水分を抜く。乾燥が不十分だと割れや反りが起こりやすく、一枚板テーブルの品質を左右する重要なステップになる。

3. 加工・仕上げ

乾燥を終えた板は、反りやねじれを削り出して平らに整える。一枚板特有の“耳”と呼ばれる外皮部分を残すかどうか、割れ目を“チギリ”と呼ばれる木片ではめ込んで補強するかなど、板ごとに最適な方法を判断して仕上げに入る。

最後に研磨をして塗装前の状態へ整えれば、一枚板の天板が完成し、脚部を取り付けて完成品となる。

塗装とメンテナンス――植物性オイル塗装とウレタン塗装

植物性の自然オイル塗装

植物油をしみ込ませるオイル塗装は、木の質感をそのまま楽しめる方法だ。塗膜を作らないぶん、水や汚れに弱い一面はあるが、傷やシミができてもサンドペーパーなどで軽く削って再度オイルを塗り直すと、ある程度きれいな状態に戻る。

定期的にオイルを塗り重ねる手間はかかるが、そのたびに表面が蘇り「自分で育てている」という感覚を味わえる。

松葉屋では使っていないが・・・ウレタン塗装

ウレタン樹脂を使う塗装では、表面に塗膜を形成する。水や汚れに強く、普段使いに向いた仕上げだ。コップの輪染みや油汚れなどを気にする人には適している。

ライフスタイルや好みに応じて選べばいいと思うが、一枚板を永く使うなら、間違いなく植物性オイル一択。松葉屋ではウレタン塗装は使っていない。

一枚板テーブルと暮らし――心を豊かにしてくれる存在

一枚板テーブルは、部屋に置くだけで大きな存在感を放つ。

インテリアの主役

リビングやダイニングの真ん中に一枚板テーブルを配置すると、無機質なインテリアでも一気に“本物感”が高まる。明るい色の樹種はナチュラルな雰囲気を演出し、ダーク系の色合いは落ち着いた高級感を引き出す。そこに合う椅子や照明を考えるのも楽しみの一つで、いつもの風景が特別な空間に変わる。

家族のコミュニケーション

自然の木目や温かな手触りには、人の気持ちを和らげる力がある。家族や友人と食卓を囲んだとき、何気ない会話が弾むきっかけになる。「この節の部分が面白い」「ここに傷が付いたが思い出になった」といった話題で盛り上がることも多い。

毎日の忙しい時間の中で、一息つける場所になりやすいのが一枚板テーブルだ。

時とともに育つ家具

一枚板は使い込むほどに色合いやツヤが変化する。明るかった木肌が徐々に濃くなり、触れる部分は磨かれたように光沢を増す。小さな傷やシミも暮らしの歴史を刻んだ証。メンテナンスをしながら長く使い続けると、人生のさまざまな場面を一緒に歩んでくれる家具になる。

日本の林業と一枚板の未来――持続可能なものづくりを考える

国内広葉樹の現状

日本は国土の約7割を森林が占め、スギやヒノキなど針葉樹が中心だが、広葉樹も相当数が存在する。ただし、伐採や加工に手間がかかるなどの理由で十分に活用されず、“森に立ちっぱなし”になっている木も少なくない。

海外材の価格高騰や環境配慮の意識が高まる中で、「国産広葉樹を有効活用しよう」という気運が高まっている。日本の森には、まだ多くの資源が眠っている。

持続可能な木材利用

乱伐や違法伐採を避け、植林や更新を行うことで、森林を守りながら適度に木材を利用する方法が確立されている。森林認証(FSCなど)を取得した木材の流通も広がり、木を長く使うほど炭素を固定できる環境メリットもある。一生ものの家具を選ぶことで、使い捨てを減らし、持続可能な暮らしを実現できる。

林業と木工の未来

木工職人の減少が課題とされているが、若い世代の参入や技術革新によって国内広葉樹の活用はさらに進む見込みだ。乾燥や加工技術が進歩し、無垢材の活用範囲も拡大している。

国産の一枚板テーブルを選ぶことは、日本の林業や木工の未来に貢献する行動だ。「森から生まれた家具を永く使う」という循環を確立し、家を彩るだけでなく環境保全にも役立てることができる。

おわりに――自然と暮らすという選択

国内産広葉樹の一枚板テーブルには、自然の恵みと職人の技が詰まっている。使い込むほどに味わいが増し、さまざまな生活の場面を共に過ごしてくれる家具。流行が移り変わっても、木という素材の持つ魅力は色あせない。

「長く付き合える大切な家具が欲しい」と考えたとき、一枚板テーブルは最適な候補になる。日本の森を想いながら、木目や肌触りを味わい、家族や友人との会話を楽しみ、子どもたちにモノを大切に使う心を育む。そんな暮らしが真の豊かさなのだと思う。

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