こんばんは。100年家具店主、松葉屋善五郎です。
私が学習机を初めてつくったのは、10年以上前のことでした。その頃はまだ「一生使える学習机」という名ではなく、「娘の机」という名だったと思います。
実は、自分の娘のために机をつくりたいという想いで設計したのがはじまりでした。
今ではもうあの設計図はどこかへ行ってしまいましたが、今も変わらず残っているのは、
「自分の子どもに使ってもらいたいと正直に思えるものをつくる」という想いです。
それはごく当然に、松葉屋の家具が「自然素材にこだわる」理由にもつながっています。
連載で書き綴ってきた「十二の想い」も今回で第二章です。ぜひ一度読んでみていただき、皆さんの感想などもお聞かせくださいね。
第二章 私が自然素材にこだわる理由
一、息子のシックハウス体験
今はもう成人した私の長男は、小さいときからアトピーでした。そして、息子が六才になる年、家を新築した私たち家族には、ある出来事が起こります。
期待いっぱいに引っ越しを済ませた初日。
その夜から、息子の咳き込みが始まったのです。
引っ越したばかりで、まだ家具もなく、和室の畳の上にふとんだけを敷いての夜でしたが、喘息のように激しく咳き込む息子。保育園に行っているお昼の間は、そんな症状がないのに、なぜか家に帰ってくると激しく咳き込む息子に、私たちは困惑するばかりでした。息子が大きくなるにつれ、症状は軽くなり、私たちもほっとしましたが、咳き込みの原因は、家の建材などから発生する化学物質だったとわかったのです。
いわゆる家原病(シックハウス症候群)でした。
その後は全国的にも法整備が進み、住宅の建材などは、シックハウス症候群や化学物質過敏症に配慮した仕様になりました。
ところが実は、ご存知の方もいるかもしれませんが、
「家具に関しては」まだ改善が不十分というのが現実なのです。
つまり、せっかく自然素材の家を建てたとしても、家具が原因で症状が出ることもあるのです。
二、つくり手の健康
家具をつくっている人への影響はどうでしょうか?
例えば、家具の塗装。耐久性とコストの面から、一般的に普及しているのは、ポリウレタン塗装です。このポリウレタン塗装を施す場合、ガンのような器具でスプレー塗装をしていきます。作業する職人は塗料を吸い込まないようにマスクをし、水が流れたブースの中で作業します。
私も何度か現場に行きましたが、溶剤のにおいばかりで、どう考えても体に良いとは思われませんでした。職人さんの健康への負荷が心配されます。
このようなことから、つかう人、つくる人の健康を損なうようなものは扱わないと決めたのです。
「私が自然素材にこだわる理由」のすべてです。
しかし私たちの身の回りを見渡してみると、
不自然なものを使わないという「ごく自然なものづくり」は、実に珍しくなってしまいました。
そんな今だからこそ、僕は自分の疑問に正直でありたいと思うのです。
(製材・乾燥前の木材を、自分の目で確かめに行った時の様子)
つくり手、売る側、つかう人がすべて、対等な関係であること。
誰かの負荷の上に、「安心できる暮らしの道具」は成り立ちません。僕はそう思います。
次回は第三章「一生ものにこだわる理由」を綴ります。