絨毯の歴史:人間が床材として用いてきた歴史、癒しとしての絨毯

ギャッベの話をしましょう

松葉屋家具店の店主、滝澤善五郎です。

気がつけば、僕がギャッベと出会って20年近くになる。

その間に、たくさんの人がギャッベに触れ、その毛足のやわらかさを撫で、その模様を眺め、そこに込められた時間に思いを馳せてきた。

イランの遊牧民、カシュガイの織り子たちと語らい、彼女たちの指先から生まれる織りの技に見とれ、広い空の下を移動する暮らしの匂いを感じたこともある。

一本一本の羊毛の糸が絡まり、織り込まれていく。そのなかに物語がある。

大地で生まれた一枚の絨毯が、日本の冬をあたため、家族の足を包み込む。

そんなつながりを、幾度となく見てきた。

これまで2000人近くの方が、僕たちが選んだギャッベを暮らしの中に迎え入れてくれた。

そのたびに思う。

この絨毯の上で、どんな時間が流れていくのだろう。

どんな話が生まれ、誰の足音が響くのだろう。

そんなことをぽつりぽつりと書いていこうと思う。

ギャッベのこと。
手仕事のこと。
僕たちが大事にしている暮らしのこと。

ギャッベが好きで好きでたまらない、そんなあなたへ贈る、第六回目の話は——「カーペットの歴史:人間が床材として用いてきた歴史、癒しとしてのカーペット 」

僕が絨毯のことを考えるとき、不思議と、遠い過去やいろんな土地の風景が頭の中に浮かび上がる。どうしてなのだろう。もしかすると、絨毯という存在は、ただ床を覆うだけの道具ではなく、人類の暮らしと心をずっと支えてきた“物語の幕”みたいなものだからかもしれない。

絨毯は古代から現代に至るまで、世界のあちこちで多様な役割を果たしてきた。寒さをしのぐために敷かれたものが、いつしか豊かな装飾となり、宗教や儀式の場面まで色彩を与える存在へ育ってきたのだ。最近では、ふかふかした絨毯の上を歩くだけで、心がリラックスするという実験結果まであるそうだ。

どうしてこんなにも絨毯が僕らを惹きつけてきたのか。
その秘密を紐解くために、

(1)絨毯の起源と進化、
(2)文化的背景、
(3)心理的な癒し効果、
(4)現代における利用法と、順に見ていこう。

  1. 絨毯の起源と進化

初期の床材と織物の起源

昔の人々が、寒さや硬い大地から体を守るために、いちばん先に使ったのは毛皮や草を編んだ簡単な敷物だったようだ。古代メソポタミアやエジプトの文明にも、そんな有機素材の敷物を使っていた名残があるのを知ると、一気に想像が広がらないだろうか。砂ぼこりの舞う土地で、草や葦を敷き詰めた上に腰を下ろす姿が目に浮かぶ。

やがて織機という道具が生まれ、繊維を織る技術が進むと、本格的な織物敷物が登場する。紀元前4000年頃のメソポタミア遺跡からは、当時すでにマット状に布を織っていた断片が見つかっている。平織りからさらに発展し、毛糸の毛足をもたせた“パイル織”へ移行していった流れは、まさに人類の知恵と工夫の積み重ねであり、今の絨毯につながっている。

遊牧民によるパイル織の発展

次は、中央アジアでの (ユーラシア大陸の中央部に位置する内陸地域。一般的には、以下の5つの国々を含む地域を指す。* カザフスタン* ウズベキスタン* トルクメニスタン* タジキスタン* キルギス これらの国々は、かつてのソビエト連邦から独立した国々であり、歴史的にシルクロードの交易路として栄えた。)


厳しい自然環境を生き抜いた遊牧民たちの話だ。彼らは、移動式のテント暮らしや、馬の背に積める財産として、携行可能な敷物を発達させたと言われている。砂漠の夜の寒さを想像すると、分厚い毛足の絨毯がどれだけ心強かったのか、少し想像できる気がする。

しかも、その技術は時とともに広がり、中国や東トルキスタン、チベット、中東、イランへと伝わっていったそうだ。たとえば「パジリク絨毯」のように、シベリアの氷の中で凍りついた古墳から発見された最古のパイル織絨毯などという逸話もある。氷に守られていたからこそ、細かな結び目や文様が奇跡的に残っていて、遊牧民の生き方や古代ペルシャの影響を今に伝えてくれている。

手織り絨毯の歴史:最古の絨毯(パジリク絨毯)と手織り技術の歴史

遠い昔の人々が織ったその絨毯を目にすると、僕はいつも“時空を超えた旅”を連想してしまうのだ。

古代文明における絨毯の発展

さらに話は古代オリエントまで遡る。ペルシャを中心に、絨毯は機能的な敷物から美しい工芸品へと進化していった。王侯貴族に贈られたり、宮殿を飾ったりしていた姿を想像すると、胸が躍る。ペルシャ絨毯は小さな花模様を精緻に織り込み、染色技術も高度だったので、見る者を惹きつける不思議な力がある。

とはいえ、有機素材で作られた古代の絨毯は時間の経過とともにほとんど朽ちてしまい、実物はめったに残っていない。ただ、絵画や文献にはその痕跡がしっかりと描かれている。床に敷く“道具”に過ぎなかったものが、人々の精神文化や装飾美術として評価されていった痕跡が、こうして歴史のいたるところに散らばっている。

中世ヨーロッパとオリエント世界の絨毯交易

中世になると、イスラム世界でさらに絨毯織が盛んになり、その精巧な産物が東西交易を経てヨーロッパへ渡った。十字軍の遠征やシルクロードの交易路を通じて運び込まれ、ヨーロッパの人々はその細やかな文様と華やかな色合いに驚嘆したという。あのマルコ・ポーロも、トルコの絨毯を“世界で最も美しい”と評したそうだ。

当時のヨーロッパでは、オリエント絨毯はまさに王族や大聖堂のための贅沢品だったのだろう。その一方で、ペルシャやトルコ、エジプトなどのイスラム圏では王立工房が作られ、いっそう精巧な絨毯が生み出されていた。16~17世紀のサファヴィー朝ペルシャを「絨毯の黄金時代」と呼ぶのも納得がいく。オスマン帝国時代には、アナトリア各地で多彩な柄の絨毯が織られ、幾何学模様や花柄、色使いの豊かさで人々を魅了した。

産業革命以降の絨毯の変遷

18世紀後半になると産業革命が起き、絨毯製造にも機械化の波が押し寄せる。イギリスやドイツ、アメリカで動力織機や合成染料が生まれ、大量に安価で美しい絨毯を作ることが可能になった。それまでは貴族や富裕層だけのものだった絨毯が、一般の家庭でも手が届く存在へと変化したのだ。

ヴィクトリア朝のイギリスを思い浮かべると、赤い絨毯が敷き詰められた部屋でお茶を楽しむ貴婦人の姿。大量生産が進んでも、手織りの伝統は消えなかった。ペルシャやトルコ、インドでは今も職人が一本一本の結び目を作り上げ、工業製品とは違う“人肌のような”温かみのある絨毯を織り続けている。機械織りと手織り、両方が並立するようになったのが、まさに産業革命以降の時代だといえる。

  1. 絨毯の文化的背景

地域ごとの特徴:ペルシャ、トルコ、中国、インド、ヨーロッパ、北アフリカ

世界は広く、それぞれの土地で絨毯は独自の花を咲かせてきた。ペルシャ(イラン)ではシルクや上質ウールを使い、緻密な花模様やメダリオン柄を織り出す絨毯が名高い。細やかな結び目と色彩感覚には驚嘆させられるし、古来「歩く絵画」と呼ばれるのも頷ける。

トルコ(アナトリア)へ目をやると、幾何学的で大胆なパターンが出迎えてくれる。トルコ結びという対称結びを使い、直線的・抽象的な文様で元気な色合いが特徴だといわれる。中国の絨毯は、明・清朝の宮廷調度品として発達した。龍や鳳凰、吉祥文様が大きく配されることが多く、ペルシャ絨毯ほどの細かさはないが、どこか余白が広くてすっきりとした構図が魅力的だ。

インドの絨毯文化はムガル帝国時代にペルシャの技術と融合して大きく開花したとされる。花瓶からあふれ出す花の文様や、狩猟図のような写実的な柄は、インドならではの豊かな美意識を感じさせる。ヨーロッパでは、中世からオリエント絨毯を輸入しつつ、17世紀頃に王立工房を設立して独自に絨毯を織り始めた。サヴォネリー工房などで作られた宮廷用の大型絨毯は、まさにヨーロッパ流の“華やかさ”だ。

北アフリカのモロッコやアルジェリアでは、ベルベル人のベニワレン絨毯などがシンプルでモダンな印象を与える。生成りのウールに幾何学ライン。遊牧民の暮らしから生まれた素朴な美というのは、意外にも現代のミニマルなインテリアにぴったり合うと思う。どの地域にも、その土地ならではの色や模様、歴史が刻みこまれているのが絨毯の面白さだ。

トライバルラグ(部族絨毯)の伝統と意味

絨毯には、さらに“トライバルラグ”と呼ばれる部族絨毯。

トライバルラグの定義と種類、その中でのギャッベの位置づけ:
遊牧民の息吹を感じる絨毯の世界

これは遊牧民や村落の女性が家庭で織るもので、模様が言葉になっているのだ。鳥や動物は豊かさや護符的な力を意味し、菱形や三角形が魔除けになるなど、文様の一つひとつが祈りや願いを映し出す。

たとえば南ペルシャのカシュガイ族が織る絨毯には、小鳥や花、木が自由に散りばめられていて、一見すると無作為に見えるのに、じっと眺めるとそこに自然観や生活文化が映し出されているのがわかる。そんなトライバルラグには、部族のアイデンティティや歴史、信仰がぎゅっと詰まっている“生活芸術品”といえる。

絨毯に込められた宗教的・象徴的要素

宗教的・精神的な色合いも絨毯には濃く漂う。イスラム文化圏では偶像崇拝を避け、幾何学模様や植物文様を織り込んだ礼拝用ラグが広く使われてきた。モスクでのお祈りや家庭での祈祷に敷かれる絨毯には、メッカの方向を示すミフラーブの形やコーランの一節があしらわれることもある。さらに、ペルシャ絨毯でよく見られる庭園図は“天国の庭”を思い描いたものだといわれている。

それだけでなく、生命の樹や邪視避け(ナザール)といったモチーフも多くの地域で使われている。生命の樹は楽園や生命の循環を表し、ナザールは悪運から守ると信じられてきた。こうした文様の積み重ねでできた一枚の絨毯は、祈りや願いを縫い込んだ“織り絵巻”だと思う。



  1. 絨毯の心理的な癒し効果

絨毯の踏み心地とリラクゼーション(科学的研究)

試しに、硬い床からふかふかの絨毯の上に足を移してみると、どういうわけか“ほっ”とする瞬間がある。科学的にも、絨毯の上を歩くときの脳波を測定するとリラックスを示すα波が増えるというデータがある。木の床よりも柔らかい絨毯は衝撃を吸収して足腰を労り、結果的に心も安定するようだ。(*「新訂カーペットはすばらしい」より

実際、絨毯のクッション性が足裏の痛みを減らしたり、身体を休めやすくするという調査結果もある。知らず知らずのうちに身体も心もほぐしてくれるのが絨毯の踏み心地だとするなら、日々忙しく生きる私たちにとってありがたい存在といえる。気づかないところで副交感神経を優位にしてくれるなんて、ちょっとした“プチ瞑想”に違いない。

日本の畳文化との比較

ここで少し日本を思い返すと、伝統的に床材として使われてきたのは畳だ。イグサを編みこんだ畳表と藁床で、弾力があるから座り心地が良く、香りにもリラックス効果があるという。畳の部屋で過ごすと落ち着くという声は多いし、東京大学の研究では空気中の有害物質を吸着する作用が見つかったらしい。畳は夏は涼しく冬は暖かいという点も魅力的だ。

ただ、畳は平面が硬めで正座や膝行がしやすい反面、寝転がったときは絨毯ほどのふんわり感はない。そこを補うのが、パイルの長いラグだったりするわけだ。日本の家庭でフローリングにラグを敷くのは、まさに畳と絨毯の中間をとるようなイメージかもしれない。どちらも人を癒やしてくれる床材でありながら、和の香りと洋のふかふか感、それぞれに良さがあるといえる。

絨毯が持つ「母性的な温もり」

絨毯の良さを話すとき、よく耳にするのが「母の温もり」だ。僕も実際に、厚手のウール絨毯の上で横になると、何ともいえない安心感を覚える。幼いころ、母におんぶされ、背に顔をうずめたとき。あの「守られている」感じ。人は柔らかい素材に触れるとリラックスしやすいという発達心理学の説があり、絨毯に触れるとオキシトシン(愛着ホルモン)の分泌が促される可能性がある。「ゆらぎ」や「グラデーション」は、いつのまにか、やさしくあたたかな気持ちにさせてくれる・・・

夜泣きする赤ちゃんが、柔らかい敷物で安心するという話も聞く。インテリアセラピーの観点から“母性を持つ家具”と呼ばれるのも頷ける。きちんと科学的に立証されるかどうかはこれからとしても、感覚的に「これは落ち着く」というのは多くの人が実感しているはずだ。だからこそ、絨毯を“母の温もり”にたとえるのは言い得て妙だと感じる。

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風水やスピリチュアルな観点からの絨毯の効果

絨毯の話をさらに深めると、風水やスピリチュアル論にまで広がる。風水的には、絨毯やラグは大地を象徴するグラウンディングの要素で、部屋に落ち着きをもたらすと言われてきた。部屋のエネルギーの流れが速すぎると落ち着かないので、真ん中にラグを敷いてエネルギーを抑制したり、逆に滞った雰囲気を動かすために鮮やかな色のラグを置いたりするそうだ。

寝室のベッド下に敷けば、眠っている間に悪い気から守ってくれるとか、玄関に半円形を置けば家庭に幸福を招き入れるとかを信じて実際体験を持つ人がいる。

科学的かどうかは別としても、天然素材の絨毯が空気中の有害物質を吸着する効果を持つことが確かめられているように、結果的に“空間を浄化”している面はあるのかもしれない。絨毯は、物理的にも精神的にも“やすらぎ”を与える能力を秘めたアイテムなのだと改めて思わされる。

  1. 現代の利用法とトレンド

インテリアデザインにおける絨毯の役割

では、現代では絨毯がどんな風に使われているのか。インテリアのプロは、「絨毯は部屋全体をまとめる接着剤のような存在」だという。確かに、家具やカーテンの色柄がバラバラでも、床に一枚絨毯を敷くだけで見違えるように統一感が出る。

また、絨毯には防音効果もあるため、集合住宅での騒音トラブルを防ぐ手助けにもなる。部屋の一角にラグを敷いて“ここはリビングのくつろぎスペース”と定義するのも面白い。毛足の長いシャギーラグに座れば、ソファより十分くつろげるし、すっきりしたウール平織ラグならモダンで落ち着いた雰囲気が出る。「床は第五の壁」という言葉どおり、いろんなスタイルを楽しめるキャンバスだ。

機械織り vs. 手織り:違いと価値

現代の絨毯には、大きく分けて機械織りと手織りの2種類がある。機械織りは大量生産できてリーズナブルであり、模様もプリントやジャカード織機で幅広いデザインを作ることができるようになった。ただ、裏面を見れば糸が基布に縫製されている構造が分かり、手織りほどの耐久性や“味わい”には欠けるかもしれない。一方の手織り絨毯は、ウールやシルクなど天然素材を使い、一本一本手で結び目を作る昔ながらの方法だ。同じ柄でも微妙に違う表情を持つのが魅力で、長い時間と手間がかかる分、高価にもかかわらず、“一生モノ”として受け継げる価値を持っている。

「手織り絨毯は100年使っても価値が下がらない、機械織り絨毯は10年で使い捨て」という極端な言い回しもあるくらいだ。だが実際には、子供部屋には洗える合成繊維の機械織りを使い、リビングにはいい手織りを飾る、なんて使い分けもあるが、正直逆だと思う。

小さな子どもだからこそ、安心安全な絨毯を使うべきだし、本物の体験してほしいと思う。

最近は世界中で、サステナビリティの意識が高まっている。手織りはそもそも人力かつ天然素材なのでエネルギー消費が少なく、機械織りでもリサイクル繊維や省エネ生産が進んでいる。

サステナビリティとエコ素材の絨毯

環境への負荷を減らすための取り組みも、絨毯業界では大きな潮流になっている。ウールやジュート、シーグラス、ココヤシ繊維など、自然に還る素材を使ったエコな絨毯が注目されているし、使い終わったペットボトルから再生した繊維で作るリサイクル絨毯も登場している。いまどきの技術はすごい。「本当にペットボトル由来なのか」と驚くほど質感が良い製品もあるようだ。さらに“絨毯to絨毯”と呼ばれるような循環型プログラムを大手メーカーが実施しているケースもある。

絨毯は廃棄するときの負荷が大きいので、そのぶんリサイクルや省エネ製造に力を入れれば、貢献度が大きい分野だといえる。今後はますます、エコ認証つきの商品やリサイクル材を使った製品が広がるのではないだろうか。気持ちのいい踏み心地と地球への優しさを両立する絨毯が、未来のスタンダードになっていく可能性が高い。

現代の絨毯デザインの動向

最後に、デザイン面の話も少し触れたい。実は絨毯は一時、中国段通が流行った頃だろうか「古臭い」「掃除が大変」と敬遠されがちだった時期もある。近頃はウールやジュートなどの自然素材に回帰する動きがあり、ベージュやブラウン、グリーンといった“アースカラー”が部屋を優しく包み込む。

また、1970年代風のレトロな幾何学模様やチェック柄が復活したり、ペルシャ風の伝統文様を一部色落ちさせたヴィンテージ風のラグが注目されたりしている。レトロモダンみたいなテイストが「懐かしいけど新しい」という雰囲気で支持されているのだ。毛足の長いシャギー絨毯も再び脚光を浴びていて、ロボット掃除機の普及で手入れが楽になったのが大きいらしい。

さらにミニマル一辺倒だったインテリアの反動なのか、強い色や大胆な抽象柄で部屋の印象をガラリと変える使い方も増えている。深紅や紺、ワインカラーといった濃色でドラマチックな雰囲気を出す人もいれば、ストライプやチェック柄のグラフィカルな絨毯で遊び心を表現する人もいる。これだけ多様化しているのを見ると、自分の好きなアートを床に描くような感覚なのだろう。

おしまいに
こうして振り返ってみると、絨毯の歴史は単なる敷物の話にとどまらず、人類の文明交流や美意識、そして癒しの文化までもが詰まった壮大な物語だと感じる。遊牧民が荒涼とした大地で編んだ織物が、ペルシャの宮廷を彩り、やがてヨーロッパへ運ばれ、産業革命を経て大量生産されるようになり、それでもいまだに伝統の手織りは残っている。それはきっと、絨毯が単なる消耗品では終わらない力を持っているからに違いない。

ふかふかした敷物に腰を下ろすとき、僕たちは体だけでなく心までも安らげている。冷たいフローリングでは味わえない“抱きとめられる感覚”に浸りながら、脳はストレスを和らげ、母性的な温もりに包まれる。しかもサステナブル素材やリサイクル技術が進む現代では、環境に優しい絨毯という選択肢も増えているのだから素敵だ。

だからこそ、絨毯は「敷物だけど敷物じゃない」。文化や癒しを織り成す、特別な存在だといえる。足元に広がる一枚の絨毯のなかに、人類の長い工夫の歴史と、僕たちの心をそっと和らげる秘密が隠されている。

もしこれを読んで「ちょっと絨毯を見直してみようかな」と思ってもらえたなら嬉しい。僕も、次にふわりと足を下ろすとき、少しだけ遠い国の遊牧民や昔の職人のことを想像してみる。彼らが込めた祈りや願いが、いつか僕らの暮らしの中でやすらぎの形となって満ちるのかもしれない。

この春、僕たちが選んだ、約二百数十枚の美しいギャッベが揃います。

大地と空、火と草色のじゅうたん
「春のギャッベ展」
4月19日(土)〜5月11日(日)

僕たちが選び抜いてきた約二百数十枚の美しいギャッベ。
他では見られない、色使い・柄のものばかりが揃います。
その中から大好きな1枚を、ご自分とご家族のためにお選びください。

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