ギャッベの選定はダイヤモンドの発掘のようです。
宝石の中でも特別な石として認識されているダイヤモンド。
もとは鉱山で発掘された原石です。
天然のダイヤモンドは大昔に地球の奥深く、途方もない時間をかけて
高熱と圧力が同時に加わるような溶岩の中でつくられました。
その他にもレアなケースですが、小惑星や隕石が衝突した場所からも
発掘されることもあるのだとか。
いずれにしても、極めて、極めて希少なもの。
天然の美しいダイヤモンドを手にするためには、
原石が眠っている場所を見つけ出し
「発掘作業」をする必要があります。
古くからの採掘法にパンニングという手法があります。
ザル状の大きな皿を持って川に入り砂を洗い流しながら探します。
砂金採掘のイメージですね。
貴重なダイヤモンドは見つけにくく、手間が非常にかかる。
僕たちは数万枚のギャッベの中から美しく、上質で、きもちがよく
清流の上澄みをすくうように極上の「いちまい」を見つけ出し、目利きします。
この「いちまい」は極めて、極めて希少。
僕らのギャッベの目利きは、これはもう感覚的。
まずは羊毛が上質か。それから織りの確かさ、あと風合い、肌触り。
それから文様、色彩…
真冬の夜に降った細かな新雪。
早朝、一転して雲ひとつない青空。まっさらな誰も踏み入れていない白い野を
一歩一歩踏み歩くようなギャッベ。
清流の上澄をふたつの手のひらですくいとって、
それを蒸留したような純度の高いギャッベ。
五感でとにかく触ってみて、ほおずりしてみる。
ギャッベに入り込んで「いちまい」と対話する。
正直言って、僕と妻とふたりで選定に行くと、「これ絶対だめ」と言われて、
僕が良いと言うのはあまり選ばれないのですけど。
基本はもう妻の感覚を信用しています。