こんにちは。100年家具店店主、松葉屋善五郎です。
連載でお届けしてきました、「『一生使える学習机』十二の想い」もいよいよ、第十一章となりました。いかがでしたでしょうか。もともと、冊子として発行した連載記事になりますが、改めてここに書き残し、学習机に込めた想い、松葉屋のものづくりへこだわりをお伝えできたらと思っています。
〜冊子帯より抜粋〜
「どうしてこの想いを書いたのか」 学習机についての私の想いを書きました。それは自分自身の子育てをあらためて確認したい気持ちだったのかもしれません。 子どもは体いっぱいで感じ、笑い、泣き、怒ります。繊細で感受性ゆたかな子どものにこそ「本物」に触れてさせるべきではないか。今は、そう信じています。
それでは、「第十一章 ムクの家具との上手なつきあい方・作法」です。
一、松葉屋が、「身近な山で育った、無垢の広葉樹」にこだわる理由
「一生使える学習机」は、ひきだしの裏板に至るまで、無垢の国内産広葉樹を使って製作されています。ベニアや合板などの木質素材は、一切使っていません。
その理由は、以下の5のことからです。
①安全性
②適度な強度と重さ
③種類ごとに美しく変化のある木理(木目)
④木を使うことで森を守る
①安全性
ベニアや集成材などの木質素材は、接着剤を使う事がさけられません。第四章でもお伝えしたように、F☆☆☆☆に認定された木材を使用したとしても、化学物質がゼロになるわけではありません。1番安全なのは、ムクの板を使うことなのです。
※ベニアや合板などの木質素材については、次の項で説明します。
②適度な強度と重さ
杉やカラマツ、ヒノキなどの針葉樹と比べ、広葉樹は一般的に硬く、「堅木」と呼ばれています。永く大切に使い続けることを考えると、程よい硬さと重さがある国内産広葉樹は、学習机に最適なのです。
③種類ごとに美しく変化のある木理(木目)
広葉樹の材を組織している細胞は、針葉樹と比べ、複雑で種類が多く、成長のためのいろいろな役割を分担しています。そのため、材の種類によって、さまざまな表情を見せる魅力があります。
④木を使うことで、森を守る
広葉樹は生育が遅く、家具材として使用できるまでには、気の遠くなるような年月が必要です。日本の森林は針葉樹が多く、広葉樹は減少傾向にあります。しかし森を守るためには、永い目でみた植林や、計画的な伐採が必要であり、日本の森を人が“適度に”使うことが不可欠です。
二、木のハナシ
一般的な学習机に使用される素材は、大きく分けて
「無垢材」と、ベニアに代表される「木質素材」です。
「無垢材」とは、一本の丸太から木取りをした材のこと。広葉樹と針葉樹のどちらもあります。
「木質素材」とは、木材を主材にして機能的・化学的処理を施し、加工成形したもののことをいいます。
具体的に、「木質素材」とは以下のようなものです。身の回りを見渡してみると、意外と多くの家具に使われていることに気づくはずです。
・ベニア(プライウッド)
木質素材の代表的な材。丸太を薄くひいた単板を積層し、接着したもの。
・MDF材
近年、低価格な家具に多く使われているのが、このMDF。木を粉砕し、接着剤でガチガチに固めて板状にしたもの。
・その他の「集成材」
集成材にもいろいろありますが、大手家具店などにある『ムク集成材』というのものは、ブロック状にした木材を接着剤で再構成したものです。
・パーチクルボード
木材チップに接着剤を加えて、加熱圧縮形成した板状製品。
いずれも木材の有効利用は認められていますが、化学的な接着剤に依存した欠点があります。
※詳しく知りたい方は、お問い合わせください。松葉屋で編集した「木について詳しくなれる小冊子」を用意しております。
松葉屋では、化学物質のない広葉樹をきちんと使いたいのです。
三、塗料のハナシ
そもそも、塗料の主な役割とは一体何でしょうか?
①木の表面の保護(丈夫にする、汚れを防ぐ)
②機能を高める(手触りがよい、滑りやすい、汚れが落ちやすいなど)
③美しく保つ(木理を美しく見せる、着色して装飾性を高めるなど)
松葉屋の学習机も含め、市販されている学習机は、ほぼ例外なく「塗装」が施されています。
ところが
適切な塗料を使わなくては、成分や溶剤の種類によっては、環境や体に対する負荷も大きく違ってきます。
「一生使える学習机」に限らず、松葉屋の家具では、食用としても使われている亜麻仁油で塗装を仕上げています。原料がすべて自然素材のため、人体にも環境にも一切の負荷がありません。一般の自然オイルメーカー(リボス・オスモ・アウロなど)に含まれている、乾燥促進剤を加えていません。仕上げはゆっくりと3回塗り、手をかけて時間をかけて、仕上げています。
※詳しく知りたい方はお問い合わせください。「塗料を知る、塗料を選ぶための小冊子」をご用意しております。
四、自然塗料のお手入れ方法
一般的な学習机の多くが、ポリウレタン塗装仕上げです。
一方で私たちの学習机は、亜麻仁油仕上げです。化学物質で固めていないため、使っていくうちに、汚れたり傷がついたりします。
なので、気をかけ、手をかけてもらう「ひと手間」が必要になります。
しかし、手をかけた分だけ、ますます美しく、永く愛着をもって使うことができます。
きっと、傷の一つひとつも、かけがえのない思い出になっていくでしょう。
傷がつかないように、汚れないように、家具そのものが無理をする必要はないと思っています。
人がひと手間かければ、その方が美しくなります。化学物質を「不自然に」使う必要はないのです。
ちなみに、「一生使える学習机」のお手入れは簡単です。
#400程度のサンドペーパーを木目の方向に沿って、なでるように軽く擦ります。
あとは布に染み込ませた亜麻仁油を、薄く伸ばして拭き上げるだけ。