松葉屋の一角にマイクロライブラリー(小さな図書館)がある。松葉屋らしくない、ベニアを切って白ペンキを 荒々しく塗っただけの棚。白い棚だから「白棚 shirotana」と名づけた。
本に関して言えば、実のところ学生時代から買ってきたクラフトやインテリアの本、それからアート系や趣味の本などが 収まりきらなくなって。 それなら来店いただいた方に読んでもらうのもいいんじゃないかと思った。
図書館と聞くと、僕は心地よい光景を思い出す。もう何十年も前、中学校の校舎の、歩くたびにギシギシ鳴る木の床。放課後に本を読んでいると、遠くの音楽室から聞こえてくる合唱部の女子たちの声。目当ての読みたい本が見つからずに、引き出しからラベルを一枚一枚見て探す。 それが貸し出しされてしまっていた時のちょっとした失望感。一週間とか二週間が永遠のように遠く感じられた。
本の古い紙の匂い。窓から冬の西日が差してくる景色。胸がキュっとなる言いようのない懐かしさ。そういう情景が松葉屋の中にあったらいいなと、ごく単純な考えから本を並べてみた。何か目的があるわけでもなく、ただ本がたくさん置いてあるというだけで感じる ワクワクする気持ち。
自分の本をみんなに見てもらうことは、実は少し恥ずかしい。キュレーターはいないけど、僕が何十年かけて選んだもの。
ふーん、こんなの読んできたんだ。 そう思ってほほえましく読みに来てください。