こんにちは。松葉屋家具店主、善五郎です。
「 松葉屋のギャッベって 、ほかで見たのとぜんぜん違いますね」
そんな言葉をいただきます。
その理由のひとつといえるのが僕たちの
ギャッベの選びかたにあると自負しています。
松葉屋を僕たち以上に理解してくれている10年以上の付き合いの選定人が、
イランゾランヴァリの倉庫の数万枚以上から一枚一枚選ばれたギャッベ。
そこからもう一度、
僕たちが
松葉屋らしい絵画のような風景が見えるもの、
絵本のように物語を感じさせてくれるギャッベを
「宝石の原石を地中から掘り起こすように」選びぬき、
名前をつけてご紹介しています。
今回は松葉屋のギャッベがどう選ばれていくかお話したいと思います。
毎回ギャッベを選定してくれている、
選定人波多野さんに話を伺いました。
「イラン・テヘランでのギャッベ選定」
善五郎(以下 善) 選定にはどこに行くのですか ?
波多野さん(以下 波) イランのイマーム・ホメイニ国際空港から 車で1時間ほど、
テヘランの郊外にあるゾランヴァリ社のオフィス 兼倉庫です。
善 スケジュールは、年何回? 時期はいつですか?
波 年3回行きます。冬2回、夏1回ですね。冬が2回の理由は、
伝統的に、
カシュガイ族が夏 ザクロス山脈で遊牧しながら織ったギャッベが
゙ちょうど出来上がる頃だから、と
聞いています。
「今回は 4番倉庫で選定します。」
イランの天気 暑いなぁ。
快晴
善 選定の一回の日程は?
波 多いのは1泊3日ですね。笑
ちなみに前回のスケジュールは、
6/25(月)
日本時間 22時 成田発 フライト 10時間40分 機内泊
6/26(火)
現地時間 3時40分 ドバイ着
現地時間 7時45分 ドバイ発
トランジット 4時間5分
現地時間 9時25分 イラン着 車でゾランヴァリ社へ〜 16時ごろまで選定、
その後ホテルにて1泊
6/27(水)
現地時間 9時30分 選定開始 現地時間 15時30分 帰路へ
現地時間 18時10分 テヘラン発
現地時間 21時 ドバイ着 トランジット 5時間40分
6/28(木)
現地時間 2時40分 ドバイ発 日本時間17時35分 成田着
「ゾランヴァリ・ギャッベ」でなくてはいけない理由
善 ひゃーなかなかハードなスケジュールですね 。
選定人 波多野さんから見たギャッベの魅力はなんで すか?
「ゾランヴァリ」でなくては、という部分はなんでしょうか。
波 数えきれないほどありますが、
沢山の人が笑顔になれることだと思います。
絨毯やラグとして安くはない品物ですが、
選んだお客様は皆嬉しそうですし、
使ってみてその使い心地や家族の笑顔でさらに満足して下さいます。
それと説明をしたスタッフに「ありがとう」と皆さん仰います。
そんな品物なかなか無いですよね。
それを聞いて、重いギャッベを運んだり畳んだり(笑)
重労働をしたスタッフも笑顔になれます。
さらに言うと、感性と高い技術で織ってくれた織り子さん、
まつ毛を緑や赤に染めながら染色してくれた
ゾランヴァリの工房のスタッフさん、
仕上げをする職人さんも、みんな沢山のギャッベが遠い日本に
笑顔を運んでいる事を、とても喜んでくれています。
関わる全ての人が喜んだり笑顔になれる点が素晴らしいですね。
ゾランヴァリでなくては…という点に関しては、
デザインや品質はもちろんそうなのですが、
約束を守ってくれることと、
織り子さんとの関係性やサポートをとてもしっかり行っている事、
一緒に仕事をしたい、そう思える人たちである点ですね。
善 ゾランヴァリとカシュガイの織り子さん達との関係は
どういう感じなんでしょうか?
波 アーティストとプロデューサーといったところでしょうか。
織子さんが美しいものを生み出せるよう、
ゾランヴァリ社も日々努力しているのだと感じます。
善 ゾランヴァリと織り子さん、
それから職人さんやスタッフたちの関係がうかがい知れて
ほんとうに嬉しい話です。
イランはどんな国ですか? イランの人は付き合っていて
どんな人たちと感じますか?
波 文化的な国だと思っています。自分たちは「ペルシャ人」、
文化と芸術の民族だという自負があります。
それと商才も素晴らしいですね。
特にペルシャ絨毯に関わる人たちは。
一方で、ジョークですが、イラン人の男 は、
世界で2番目に働かないと言われているとか。
1位はスペイン人だったかイタリア人だったか忘れてしまいましたが。
日本のように会社に雇われて働く人の割合は少なく、
皆自分で事業をしたり、お店をやったりします。
女性はギャッベを織ったりして働き者ですが、
男性は気ままな人も多いようです。
善 僕たちもお世話になったアリさんも奥さんが5人いるとか、
しかも同じ家に同居されているとか。
日本で は考えられない家族形態ですねー。
選定には毎回何枚くらい見るんですか?
「1回の選定で、大体1万〜2万枚から選ぶ」
波 1回の選定で、ミニギャッベも入れて大体1万〜2万枚くらいでしょうか。
そこから数百枚以上選定します。
善 すごい!
1万枚以上もギャッベをめくっては選び、めくっては選びするんですね。
選定の手順をざっと教 え てく だ さ い 。
波 まず、大きいサイズ(2m×3m)から見る事が多いです。
ゾランヴァリのスタッフがめくってくれるので、 まずは無心で見ていきます。
少しでもいいな、と思えたものには「check」もしくは「keep」と、
残念ながらそ うでないものには「No」と言っていきます。
これをサイズを小さくしていきながら順番に繰り返します。
150 × 200 サイズを見終わった頃に、順にチェックをします。
大体この途中くらいで一度お昼ご飯を食べます。午後 になったらもう一度チェック。
この後ミニギャッベを選ぶか、それ以外のサイズかは、
その時自分たちが欲しい枚数と、
倉庫に何枚あるかで 順番を変えていきます。
善 ここは本題です。選定の基準を教えてください。
どんなところを見て良い悪いを決めていきますか ?
波 先ほどもありましたが、まずは無心で見るようにしています。
私もまだまだ駆け出しですが、
その中でも沢山ギャッベを見てきたので、お客様に喜んでもらえそうなもの、
はたまた、驚きや感動を得られるようなもの、 など、
まずは幅広く「いいもの」を keep していきます。
善 直感がものを言う時間ですね。
ハミッド・ゾランヴァリさんと、慎重に選定しています。
波 その後はつくりのチェックです。
・織の密度
・毛足が十分に残っているか(刈り込みすぎていないか) を絨毯の表や裏を触って確かめます。
これらは 20年、30年と使った時の事をイメージしながら しっかりチェックします。
綺麗でもこれが不十分な一枚には、残念ですが「NO」と言います。
このときに改めて色 や柄を反対側に回って光沢なども確認します。
最後に、 縁や房などを見て、
補修が必要なものがあればスタッフのハジさんと呼ばれるおじさんに
強くお願いします。
善 船便で届いてから、僕らもたくさんの素敵なギャッベを選ばせてもらいました 。
松葉屋の選ぶギャッベ はどう感じられますか?
イランでの選定で、僕らのことを意識してくれていると嬉しいのですが。
波 先ほど述べたギャッベのチェックの際、
全国各地の たくさんのお客様の顔を思いうかべます。
「あの方が好きそうだなぁ」といった感じで。
今回の選定は特にな のですが、
「善五郎さん、佳子さんが気に入ってくれそうだなぁ。
厳しくチェックしなきゃ。」と
思う事が何度も何度もありま した。
その結果で「いいものが選べた」と善五郎さん、佳子さんに言って頂けて、
とても嬉しいです。
善 選定していて「わーあれはすごい!」と鳥肌が立つような時がありますか ?
波 この瞬間は沢山ありますね。
お店でお客様がご覧になるときとまったく同じように、
めくってもらって顔を出した瞬間、触れてみた瞬間、織の良さを感じた瞬間。
織子さんをはじめ関わった人の苦労と、
日本に持ち帰ってそれを見た人の驚きや笑顔が瞬間的に脳裏をよぎり、
なんとも言えない高揚感に襲われることが数少ないですがあります。
割合で言うとその時々で変わるので難しいですね。
恐らく、自分の心や身体の状態によっても違うんじゃないかなと思います。
善 波多野さん個人的にはどういうギャッベが好きですか?
波 グレーの原毛が好きです。元来、ライトグレーの色が好きなようで、
ギャッベのグレーは羊そのものの色が多いので、特に心惹かれますね。
それと、風景画のギャッベを見ると思わず声が漏れてしまいますね。
善 松葉屋には 3000人以上のギャッベのお客さまや
ギャッベに憧れる お客さまががいらして、これを読んでいただいています。
選定人として 松葉屋の「ギャッベ大好きさん」に一言お願いします。
波 選定人を引き継いでまだ駆け出しですが、
豊富な経験をもつ歴任者や、松葉屋さんのような素敵なお店 の皆様、
そして何より、お客様に日々育てて頂いていると感じています。
番外編〜こぼれ話
善 ハミッド・ゾランヴァリさん は 毎回立ち会ってくれるの?
(ハミッドさんはゾランヴァリ 社のゼネラルマネージャーさん)
波 海外(スイスなど)にいなければ、シラーズからはるばる来てくれますね。
お昼ごはん を一緒に食べたりします。
善 イランでは主に何を食べますか ? イラン食のおすすめを教えてください。
波 私はイラン食が大好きですね。食べる事 が多いのはケバブで、トルコなどとは違って、
ゴロっと大きなお肉のバーベキューというか、 焼肉を想像してもらえるといいです。
遊牧民の 人たちにはご馳走で、おもてなしの料理のようです。
日本人だと、お寿司みたいな感じかなと思います。
それとゾランヴァリさんがごちそうしてくれる、トマトと豆のスープは家庭料理なのですか
゙とてもおいしく、細長いインディカ米みたいなサフランライスも、
いつもついつい食べ過ぎてしま います。
善 言葉はペルシア語ですよね。コミュニ ケーションはうまくやってますか ?
波 選 定 の 際 は ハミッドさんと現 地 スタッフのジャファリさん が 英 語を話せるので、
英 語 で話しますね。お互いそんなに上手ではない ので、かえって聞き取りやすいです。笑
スタッフさんたちに挨拶とお礼はいつもペ ルシャ語で言います。
「サローム」と「ヘイリー マムヌーン」、
「ホダーハーフェス」と。
少しず つ、ペルシャ語も覚えるようにはしています。 ただ、字はとても難しいですね ((+_+))
春のゾランヴァリ・アートギャッベ展
「大地と空、火と草色のじゅうたん」会期が決まりました。
昨年12月に買い付けした、ゾランヴァリ・ギャッベをさらに選定した400枚
2019.4月20日(土)〜5月6日(月)
楽しみにお出かけください!